海の中
僕は今、海の中にいる。しかし、それは幻でしかも水面がない。故にここから出るには幻を作っている人物にダメージを与えるか海水がなくなるまで吸い込むしかない。前者は居場所を特定すればすぐに実行できるが後者は時間がかかりすぎる。
「よし、とりあえず幻術使いを探そう」
探知開始。ん? 僕以外に生体反応がないな。海水と同化してるのかな? いや、違う。幻術使いはここにはいない。僕に見つからない場所にいるんだ。
「とりあえず海を割るか」
僕は手刀で海を二つに分けると探知する範囲を広げた。
おかしいな……。僕以外に生体反応がない。これじゃあ、まるで水槽の中の魚だ。ん? 水槽? はっ! そうか! そういうことか!!
「こんな世界……壊れてしまえー!!」
「ひゃああああああああああああああああああああああ!!」
ビンゴ! 幻術使いの声だ!
「お前が幻術使いか!!」
「な、なんでバレるのー!? というか、どうして自力で幻術を壊せたのー?」
「それはなー、お前の幻術が水槽みたいだったからだ!!」
「あー! そっかー! 私の幻術、水族館に行った後に作ったからその影響受けてたんだったー! もうー! 私のバカバカバカ!!」
「今さら後悔しても遅い! さぁ、僕と戦えー!!」
「やだー! おうち帰るー!!」
「逃がすかー!!」
やつはどこだ? 近くにいるはずだ。
「おい! そこのメダカ! どこに行くんだ?」
「が、学校に行くところです」
「そうか。気をつけて行くんだぞ」
「は、はいー」
「嘘をつくなー! メダカの学校はー! 川の中だろうがー!」
「し、しまったー! すっかり忘れてたー!!」
「待てー! 逃げるなー!」
「ひいー! 助けてー!!」
「くらえ! 『行き止まり』!!」
「え!? な、何これ!? いきなり逃げ場がなくなっちゃった!!」
「さぁ、もう逃げられないぞ。早く僕と戦え!!」
「い、嫌だー! 戦いたくなーい! 死にたくなーい!」
「何? じゃあ、お前は何しにここに来たんだ?」
「私はただ友好関係を築きに来たんだよー! でも、やり方分からないから、とりあえず幻術を使っただけなんだよー!」
「なんだ、そうだったのか。なら、最初からそう言えばいいのに」
「言おうとしたけど、あなたが私を見つけようと血眼になってたから怖くて言えなかったんだよー」
「そうか、それは悪かったな。じゃあ、とりあえず近くの公園で話そうか」
「は、はいー」
はぁ……なんか下校中によく狙われるなー。どうしてかなー?




