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え!? 鬼!? 座敷童子!?

 私は同居人全員にお兄ちゃんが記憶喪失になったことを伝えた。


「そっかー。雅人まさと、記憶喪失になっちゃったのかー。叩けば治るかなー?」


「バカですか? あなたは。そんなことしたら確実に今より悪化しますよ」


「はぁ? じゃあ、ちんちくりんならどうするのよ」


「そうですね……膝枕をすれば治るかもしれません」


「あんた、それ本気で言ってるの?」


「ええ、本気ですよ」


「マジかー」


「え、えーっと、あなたたちは人……なんですか?」


「あたしは鬼よ」


「私は座敷童子です」


「え!? 鬼!? 座敷童子!?」


「お兄ちゃん、落ち着いて。この家には少なからずお兄ちゃんに好意を持ってるやつらしかいないから」


「妖怪に好かれても嬉しくないよ……。あっ、ちなみに君は人なの?」


「私は二口女だよ。ほら、後頭部にもう一つ口があるでしょ」


「う、うわあ、ホントだ……。しかも髪が勝手に動いてる」


「お兄ちゃん、怖がらないで。私、おいしいものしか食べないから」


「本当か? 実は人を食べてたりしないか?」


「人間なんか食べたらおなか壊しちゃうよ」


「そ、そうなのか?」


「うん」


「そ、そうか」


「えーっと、じゃあ、いつも通り一緒にお風呂入ろっか」


「ああ……って、僕はいつも君とお風呂に入っているのか!?」


「うん、そうだよ」


「えっと、君は僕の親戚なんだよね?」


「うん」


「見た目、小学生っぽいけど……」


「大丈夫! 私、こう見えて高校二年生だから!!」


「いや、でも……」


「親戚と一緒にお風呂に入っちゃいけない法律なんてないよ。ほら、早く行こう、お兄ちゃん」


「いや、いいよ。あとで入るから」


「恥ずかしがらなくていいよ。私がお兄ちゃんの体きれいにしてあげるから」


「いや、でも、何かあったらまずいだろ?」


「大丈夫だよ」


「いやあ、でも……」


「はぁ……しょうがないなー。じゃあ、お兄ちゃんより力強いところ見せてあげるよ。童子わらこちゃん、握力計二つ持ってきて。壊れてもいいやつ」


「分かりました。はい、どうぞ」


 ん? 今なんか何もないところから握力計出てきたぞ。


「ありがとう。じゃあ、まず右ね。えいっ」


「……!! あ、握力計が! こ、壊れた!!」


「次は左ね。えいっ」


「……!! うわー! また壊れた!! 君の細い腕のどこにそんな力があるんだ!?」


「妖怪だからね。これくらいできて当然だよ」


「そ、そうなのか?」


「うん、そうだよ。ねえ? 二人とも」


「まあねー」


「当然です」


「そ、そうか。じゃあ、僕はリビングでのんびりさせてもらうよ」


「お兄ちゃん、お風呂入ろう♡」


「い、嫌だー!」


「あっ! 逃げた! 待て待てー!!」


「ひえー! 髪が僕を追いかけてくるー!! 誰かー! 助けてくれー!!」


「ねえ、ちんちくりん。アレ、ほっといていいのよね?」


「はい」


「あんな雅人まさと初めて見た」


「私もです」


「ふーん、そうなんだ」


「ええ」


「じゃあ、ちょっとパトロールしてくるわね」


「今日はあなたの当番ではありませんよ」


雅人まさとがあんなんじゃパトロールなんてできないでしょ? だから、私が代わりにやるのよ」


「明日は雨が降りそうですねー」


「何よ、あたしが誰かのために何かしたらダメなの?」


「いえ、別に。むしろこれからもそうしてほしいです。あー、それとそれは私だけでなく私の母の願いでもあります」


「あいつの?」


「はい、そうです」


「あたしのせいで重傷負ったのに?」


「はい」


「そう。まあ、一応覚えておくわよ」


「そうしてもらえると助かります」


「じゃあ、いってきまーす」


「いってらっしゃい」


 外にいるやつが犯人か。でも、今のところ雅人まさとに攻撃するつもりはないみたいね。

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