お兄ちゃん、こっち見て
火星の女王、ミラクルバレットの作者のサインもらった瞬間、子どもみたいにはしゃいでたなー。帰ったら座敷童子の童子にお礼言わないといけないな。
「……『神の稲妻』」
その声が彼の耳に届く前に彼は彼女の技によって彼女にとって不要な記憶を全て失ってしまった。
「……僕は……誰だ?」
「あなたはこの星を終わらせる者。さぁ、私と一緒にこの星を終わらせましょう」
僕が一歩前に進むと見知らぬ少女が僕の手を掴んだ。
「お兄ちゃん、こっち見て」
「君は誰だ? 僕の親戚か何かか?」
「まあ、そんな感じかな。それより早く帰ろうよ。今日の晩ごはんはキスフライだよ」
「キス? フライ?」
「あー、えーっと、鱚っていう魚がいてね、それをあれやこれやして油で揚げたもののことを言うんだよ」
「そうか。おいしそうだな」
「でしょー。ほら、早く帰ろう」
彼女の手の温もりが僕の手に伝わり、それは脳を刺激する。なんだ? 僕は今日、初めて彼女と会ったはずなのに僕は何度も彼女と会っているような気がする。まあ、親戚らしいから別におかしくはないけど。
「お兄ちゃん! 早く早く!」
「お、おう、分かったー」
「……ここまでは想定内。だけど、これで本当にうまくいくのかは分からない。どうして分からないのか、どうしてこんなに不安なのかも分からない。分からないけど、これだけは分かる。彼女はおそらくこの星の王より強い」
お兄ちゃんに何があったのかはもう分かってるけど、今は何も知らないふりをしておこうーっと。




