明けの明星
金星の女王は手鏡を使って自分の分身をたくさん生み出している。まあ、『水銀の槍』で一掃されているのだが。
「ねえ、君は借り物の力とオリジナルの力、どっちが強いと思う?」
「はぁ? そんなのオリジナルに決まっているでしょ?」
「大抵はね。でも、僕は使い手次第だと思ってるんだよ」
「何が言いたいの?」
「僕が使ってるのは借り物の力で君のはオリジナルだけど、君の攻撃はなぜか僕に届かない。どうしてかな?」
「私があんたより弱いって言いたいの?」
「違うよ。攻め方を変えろって言ってるんだよ」
「あっ、そう。じゃあ、これでもくらいなさい!!」
なんだ? 風が騒いでる。ま、まさか!!
「キュー! 僕たちを飲み込め!!」
「キュー!!」
「ちょ、何よ! そいつ! きゃー!!」
「キュー! 僕がいいと言うまで絶対僕たちを外に出しちゃダメだぞ!!」
「キュー!!」
キューの中。
「ちょっと! ここ、どこよ!!」
「なぜか自我を持ってる空間の中だよ」
「え? 空間? というか、ここってそいつの中なの?」
「ああ、そうだ」
「そう……じゃなくて! なんでこんなところに閉じ込めたのよ!!」
「君がスーパーローテーションを使おうとしてからだよ」
「え? もしかしてそれって使っちゃダメなの?」
「金星の自転より速い風を吹かせて町に被害が出ないと思うか?」
「あっ……」
「はぁ……頼むから地球を攻撃しないでくれ」
「わ、分かった。えっと、じゃあ、戦い再開していい?」
「ああ、いいぞ」
「よおし、じゃあ、いくわよ! スーパーローテーション!」
「『水銀の繭』」
「あっ! ずるーい! それじゃあ、いくら強い風吹かせてもダメージゼロじゃない!!」
「攻め方を変えろとは言ったが、こっちは何もしないとは言ってないぞ」
「くー! ああ言えばこう言う!! はぁ、私の美しさは通用しないし、スーパーローテーションは防がれるし、あんたいったい何なのよ!!」
「さぁ? 何なんだろうね」
「ムッカー! もう怒った! 殺してやる! 絶対殺してやる! なーにが星の王の中で最弱よ! 噂と違うじゃない! あー! もうー! イライラする! 本当は使いたくなかったけど、使わないと勝てそうにないからアレ使うわ!!」
「アレって?」
「それはねー……『明けの明星』」
「……!!」
そうか。そうだったな……。星に関するもの全てを使えるのが星の王同士の戦いだもんな。でも、まさか天使と戦うことになるとは思わなかったなー。
「『金星の追尾槍』」
光り輝く大量の追尾槍が彼女の周囲に出現する。あー、これはマジで潰す気だな。勝てるかなー。
「やれ」
「『水銀の重鎧』!!」
あー、これはまずいな。防御しかさせてもらえない。どうしよう。
「いいか? 雅人。水銀使いというのはな」
「水銀の可能性を広げ続ける者のことを言う……ですよね、師匠!!」
「……ん?」
「全方位攻防可能水銀……『変幻自在』!!」
「それがどうした? やれ」
「槍の雨はもう効かないぞ!!」
「……そのようだな。では、あいつにバトンタッチするか」
「バトンタッチ……だと?」
おいおい、それ奥の手じゃないのかよ。手強いなー。




