星界解放
こいつ、本当に星の王の中で一番弱いのか? いや、待て。そもそもこいつはまだ星力解放すらしていない。それなのに私の『水星突撃』を初見で攻略し、さらにそれを私にぶつけてきた。だから、どうした? 私は水星の女王だぞ? こんなやつに負けるわけがない! 負けていいはずがない! さぁ、ここからだ。ここからがマーキュリータイムだ!!
「最弱……お前のミスを教えてやろう。それはな……今ので私を倒さなかったことだ!!」
「そうかな? そのおかげで君と戦える時間が増えたから僕はミスだとは思わないな」
こいつ……!
「そうか! だが、絶対に後悔するぞ!!」
なんだ? 公園が震えている。こいつ、いったい何をしようとしているんだ?
「星界解放……『水銀の世界』」
「や、やめろ! そんな大技こんなところで使うな!!」
「黙れ! 私に命令するなー!!」
公園が徐々に水銀で覆われていく。うーん、これはちょっと戦いにくいなー。
「なんか面白いことになってるわねー」
「……鬼姫、お前何しに来た?」
「遊びに来た、ただそれだけよ」
「何とだ?」
「もちろんそいつと」
「ダメだ。今すぐ帰れ。これは僕の戦いだ」
「さっき文字の力使ったくせに」
「あ、あれは仕方なく」
「あたしねー、星の王同士の戦いは星に関するあらゆるものを使って戦ってもいいと思うのー」
「はぁ……分かった。好きにしろ」
「やったー! ありがとう! 雅人! じゃあ、体借りるわよー!!」
「おう」
な、なんだ? こいつ、急に雰囲気が変わったぞ? まあ、いい。フォルムチェンジしようとこいつが最弱なのは変わらん。
「死なないでね。うりゃ!!」
こ、こいつ! いつのまにこんな近くに!!
「す、『水銀の盾』!!」
「ありゃ、防がれちゃった」
「な、何なんだ! お前は!! 戦い方がさっきと全然違うぞ!!」
「そりゃそうよ。今は私がこいつの体を使って戦ってるんだから」
「な、なんだと! それを早く言え!!」
「はぁ? あんた、もしかしてそういうのいちいち言われないと不安になるタイプなの? そんなんでよく水星の女王になれたわね」
「ぶ、無礼者! この場で処刑するぞ!!」
「処刑? このあたしを? あんたにできるの? あたしより弱い、あんたに」
「私が……お前より弱いだと?」
「ええ、弱いわよ。見た目も中身もまだ子どもなんだから」
「黙れー! 『水星突撃』!!」
なるほど。水星そのものを新幹線並みの速さでぶつける技か。たしかに今の雅人じゃ、これを受け止めるのは無理ね。でもね、別に受け止める必要はないのよ。
「ピンチはチャンス! 秘技! 『鬼姫一発』!!」
「……ゴハッ!!」
あー、まずい……意識が……。
女王様なら大丈夫だよ!
そうだよ! 女王様は他の星の王なんかに負けたりしないよ!
女王様ー! 届かないかもしれないけど、私たちはここで応援してるからねー!!
いろんな星に目をつけられても、この星の人たちはみーんな女王様の味方だよー!!
「……負け、られない」
「え? なんだって?」
「私は……! こんなところで! 負けられない!!」
こいつ、まだ戦うつもりなの?
「いいね、面白い。来な!!」
「『始まりと終わり』!!」
そっか。じゃあ、こっちも!
「『悪鬼駿足』!!」
あたしのスピードについてこられるかな?
「来い! 水星女!!」
「訂正しろ! 私は水星の女王だ!!」
「似たようなもんでしょ?」
「全然違う!」
「あっ、そう!!」
お兄ちゃん……大丈夫かな? まあ、鬼姫ちゃんと一緒に戦ってるから大丈夫……だよね?




