あのねー
何の前触れもなく地獄そのものに話しかけられた。うーん、まあ、とりあえず話してみるか。
「君はたしか星の王……なんだよね?」
「まあ、一応」
「なるほど。だからかなー。いや、違うな。君だから……だね」
なんか一人で納得してるな……。
「えっと、僕に何か用かな?」
「用がないとおしゃべりしちゃいけないのかな?」
「いや、別にそんなことはないけど」
「そう。じゃあ、食堂で話そうよ。ほら、ここ熱気すごいから」
「分かった」
早く人間界に帰りたいなー。夏樹(僕の実の妹)を待たせてるから。
僕が食堂にやってくると見知らぬ少女……いや、幼女が席に座った状態で手招きしている。僕はチラッと後ろを見たがそこには誰もいなかった。
「おーい! こっちだよー! 早く来なよー!」
「お、おう」
地獄そのものに呼ばれるってなんか嫌だな。
「はじめまして。星の王。私は地獄の人間体、奈落ちゃんだよ」
「ど、どうも」
「緊張しなくていいよ。私はただ、君とおしゃべりしたいだけなんだから」
「は、はぁ」
「よし、じゃあ、とりあえず君のこれからについて話そうか」
「これから?」
「うん。えーっと、今のところまだ正妻戦争は起きてないからそれはまあ、いいとして。君以外の星の王がもうすぐ現れる可能性が高いことは知ってる?」
「もうすぐ……なのか」
「うん、そうだよ」
「それはいったいいつなんだ?」
「さぁ? そこまではちょっと分からないなー」
分からないのか……。
「でも、やつらは確実にこの星に現れるよ。君を倒しにね」
「冥王星からもか?」
「うーん、どうだろう。でも、星の王って星ごとにいるから多分来るんじゃないかなー」
「どうして僕を倒しに来るんだ?」
「それはねー……君が星の王の中で一番弱いからだよ」
「そうか。で? 僕はどれくらい弱いんだ?」
「うーん、そうだなー。君がイワシだとしたら他の星の王はサメだね」
「そうかー。でも、そのイワシが猛毒を持っていたら相打ちにできるな」
「面白い発想だねー。まあ、要するに実際に戦ってみないと勝敗は分からないってことだね。えーっと、じゃあ、最後に一つだけ言っておくね」
「なんだ?」
「君は君のまま強くなってね」
「え? あー、うん、分かった」
「よろしい! じゃあ、これからも頑張ってねー! まったねー!」
「お、おう、またなー」
大丈夫。君は一人じゃないからきっと勝てるよ。
「どうです? 勝てそうですか? 彼は」
「閻魔ちゃんは相変わらず地獄耳だねー。うーん、どうだろう。でも、きっと勝てるよ。彼は一人じゃないから」
「そうですか。なら、良かったです」
「ねえ、閻魔ちゃん。ちょっと相談があるんだけどいい?」
「何でしょう」
「あのねー」




