機嫌
白猫と夏樹と共に一階に向かうと、座敷童子が朝ごはんを食べていた。
「おはようございます」
「お、おはよう」
なんか怒ってないか?
「おはよー! 童子ちゃん!」
「おはようございます」
ん? なんか僕の時と比べてトーンが高いような。
「おはよう」
「あら、あなたも一緒だったんですね。白猫さん」
やっぱりなんか変だ。
「な、なあ、童子」
「何ですか?」
やっぱりなんか怒ってるよな?
僕、なんかしたかな?
「いや、別に何も」
「そうですか。なら、さっさと食べてください」
あっ、はい。
僕はじっとこちらを見つめている座敷童子から目を逸らした。
すると、夏樹が首を横に振った。
な、なんだよ。逃げるなって、ことか?
「きょ、今日の朝ごはんもおいしいな」
「当然です。あなたの好みはとっくに把握済みですから」
えっ、何それ、怖い。
いや、待て。こいつがここに来て二週間は経っているんだから、それくらいは……。
「あと、お弁当を作っておいたので、ちゃんと食べてくださいね」
「え? あ、ああ、ありがとう」
座敷童子が僕に渡したのは薄ピンク色の包みに包まれた弁当箱だった。
「なんか最近、お前に頼りっぱなしな気がするけど、大丈夫か?」
「何がですか?」
何がって、それはほら、あれだよ。
「か、家事とか、僕がいない間、夏樹の相手をするとかだよ」
「私はやるべきことをやっているだけです。なので、別に苦ではありません」
そ、そう……なのか?
「そ、そうか。なら、いいんだが」
その日の朝食はそんな気まずい空気の中、食べた。
結局、座敷童子の機嫌はずっと悪いままだった。
今日は早めに帰って、理由を訊いてみよう。