歓迎
僕が勢いよく扉を開けると、そこには小さな侵入者がいた。
「お、お前は誰だ! どうやって、うちに入った!」
僕が小さな侵入者に向かってそう叫ぶと、小さな侵入者は小首を傾げた。
「どうやって? そんなのあなたが家に入った時ですよ」
「何? ということは、お前はずっと気配を殺した状態でうちまでついてきたってことか?」
小さな侵入者はコクリと頷く。
「そうか。そういうことか。けど、鬼の力を持つ僕に気配を察知されないなんて、お前すごいな」
「座敷童子に不可能はありません!」
座敷童子が自信に満ち溢れた声を出すと、僕の背中に乗っていた妹が彼女の背後に一瞬で移動した。
妹は長い黒髪を触手のように動かし、彼女が危険物を持っていないか調べた。
「ちょ、ちょっと! や、やめてください! あははははははは!」
「夏樹、その辺にしてやれ。笑いすぎたせいで死なれたら困る」
妹はコクリと頷くと、彼女を解放した。
「はぁ……はぁ……座敷童子である私になんてことするんですか! この二口女!」
「あっ、今、妹の悪口を言ったな?」
僕の可愛い妹をバカにするやつは誰であろうと絶対に許さない。
「えっ? あー、その……い、今のは冗談です。だから、本気にしないでください」
「本当だな? 嘘だったら許さないぞ?」
座敷童子は苦笑した。
僕は彼女をじっと見つめている。
その時、妹は僕の脇腹をつついた。
「ん? なんだ? 夏樹」
「お兄ちゃん……この子……うちに泊めてあげて」
悪口を言われた相手を泊めてあげるだって?
なんて優しい子なんだ。
「よし、分かった。おい、座敷童子」
「『座敷 童子』です!」
えっ? 今のこいつの名前なのか?
まあ、いいや。
「えっ? あー、じゃあ、童子」
「はい、何ですか?」
小首を傾げるな、わざとらしい。
「えー、まあ、その……うちの妹はお前を一人にしておきたくないみたいだから、今夜だけ泊めてやるよ。ただし! 妹に妙なことをしたら、すぐに追い出すからな! 分かったな!」
「はい! 分かりましたー! それじゃあ、夏樹さん。今日は私と一緒に寝ましょう」
は? そんなこと誰が許すと思って……。
「うん……いいよ」
そ、そんな……。夏樹、今日は僕と一緒に寝るんじゃなかったのか?
「あ、あのー、僕も一緒に寝てもいいかな?」
「定員オーバーだから……無理」
ええ……。
「……嘘だよ」
「な、夏樹……!」
妹は僕に手を差し伸べると、ニッコリ笑った。
僕は泣きながら、その手を掴んだ。
「それじゃあ……今日は……三人で一緒に寝よう」
『はい!』
僕と童子が同時にそう言うと、妹は僕たちを部屋に招き入れた。