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高女の夢

 人が怖いと思う要素は色々ある。音、におい、感触、気配。そして視線。ところで君は何をされたら怖いと思うのかな?


「うわー!」


「キャー!」


 夜の町に悲鳴が響き渡る。うるさいなー、静かにしてくれよ。僕が寝返りをうつと自室の窓に人の影が現れた。


「……そこにいるのは誰だ?」


「こんばんは。高女たかおんなです」


「そうか。おやすみ」


「ちょ、ちょっと待ってください! 私の相手をしてくれないんですか!?」


「だったら、いきなり二階以上の建物の窓の外に現れるな。人間はありえない場所にありえないものがあると怖がるんだから」


「いやあ、高い建物を見るとつい体が最上階に行っちゃうんですよねー」


「じゃあ、屋根とか屋上に行けばいいじゃないか」


「人間が夜中に何をしているのか気になるじゃないですか」


「お楽しみ中だったらどうするんだ?」


「しっかりと目に焼き付けます!!」


「君、そんなだから男に相手をされない遊女の霊だって思われてるんだぞ」


「え? 私はただの観測者ですよ?」


「はいはい。じゃあ、おやすみ」


「えー、もう寝ちゃうんですか? もう少しお話ししましょうよー」


「夜更かしは肌に悪いぞ」


「私、肌ないので関係ありません」


「はいはい。まあ、その、これ以上騒ぎが大きくなるといけないから朝までゆっくりしていけよ」


「え? いいんですか? やったー! それじゃあ、お邪魔しまーす!!」


 高女は僕の部屋に入るとベッドの下や机の引き出しの中を見始めた。


「君が期待しているようなものは一つもないぞ」


「えー! なんでないんですかー! あなた、本当に男子高校生なんですかー?」


「僕にはそんなもの必要ないんだよ。というか、買ってもすぐに燃やされるよ」


「となりにいるあなたの妹にですか?」


「ああ、そうだ」


「そうですかー。でも、女体に興味がないわけではない」


「まあな」


「じゃあ、私が色々教えてあげましょうか?」


「僕には娘が何人かいるから君に教わることなんて何もないよ」


「な、なんですってー! ちょ、ちょっと娘ができるまでの過程を教えていただけませんか?」


「僕と異性の力をいい具合に合わせたらなんかできた」


「ん? じゃあ、あなたは卒業すらしてないってことですか?」


「まあ、そうなるな」


「うーん、もっとこう、ないんですか? 朝まで起きていられそうな猥談は」


 こいつ、猥談が好きなのか。


「毎日実の妹とお風呂に入っているけど、何も起こらないぞ」


「えー! なんでですかー! 血のつながった兄妹の禁断の恋とか始まるでしょ!!」


「それは生まれた時から始まっているけど、色々と障害があってなかなかうまくいかないんだよ」


「そんなの法律を変えればいいじゃないですか!!」


「君は国より自分たちの都合のいいようにしたい連中を説得させられるのか?」


「そうですねー。説得するのは難しいので全員赤ちゃんからやり直してもらいましょうかねー」


「あー、若返りの薬の原液を飲ませるのか」


「はい! まあ、その前に記憶を消去する必要がありますけど、それは記憶を食べる妖怪たちに提供します」


 へえ。


「えー、では、次に楽園作りを始めます!!」


「楽園作り?」


「はい! 人間と妖怪が仲良く暮らしているそんな夢のような場所です!!」


「いいね。その夢、実現させよう」


「え? いや、そんな夢みたいな話実現するわけ」


「そう思ってるうちは実現しないよ」


「え、えーっと、じゃあ、私の夢を実現できるように協力してもらえませんか?」


「ああ、いいぞ。でも、今日はもう遅いから寝させてくれ」


「あー、はい、分かりました。おやすみなさい」


「うん、おやすみ」


 や、やったー! 夢に一歩近づきましたー!! これは大きな一歩ですよー!!

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