血液占い?
フーリン(フリカムイの雛鳥)が雲の上からとはいえ目的地まで飛んだことを僕が夏樹(僕の実の妹)に伝えると夏樹はツカツカとフーリンの目の前に向かった。
「ピヨ?」
「あー、まあ、その……やるじゃない。その調子で頑張りなさい」
「ピヨ!」
「は? そんなのあんたに言われなくても分かってる? こいつー!!」
「ピヨー、ピヨピヨー」
フーリンがリビングにあるソファの上から僕の肩に移動する。うーんと、僕は避難所か何かなのかな?
「あっ! こら! お兄ちゃんを盾にするな!!」
「ピヨピヨ、ピヨピヨ」
「フーリン。お前に一ついいことを教えてやろう」
「ピヨ?」
「それはな、夏樹が同性を褒めることはあまりないってことだ」
「ピヨ!」
「何よ。私が同性を褒めちゃダメなの?」
「ピ、ピヨ」
「は? でも、あんたに褒められるとなんか気持ち悪い? ねえ、お兄ちゃん。こいつ、今日の晩ごはんにしてもいい?」
「ダメだ」
「そっかー」
「ピーヨ、ピヨピヨピヨピヨ」
「カッチーン。丸焼き、焼き鳥、唐揚げ、チキンライス、サラダチキン、三色そぼろ丼、親子丼、照り焼きチキン、チキン南蛮。色々あるけど、どれにされたい?」
「ピ、ピヨー!」
「こらー! 逃げるなー!」
仲良いなー。あっ、トラップ設置したままだった。一般人が引っかかる前に回収しに行こう。
「夏樹ー、今日何食べたい?」
「お兄ちゃーん!」
「いや、そういう意味じゃなくて晩ごはんの方だよ」
「じゃあ、カツ丼!!」
「分かったー」
僕が外に出ようとすると少し先の未来からやってきた僕の娘が僕の行く手を阻んだ。
「今日はもう外に出ない方がいいよ」
「そうなのか?」
「うん」
「そうか。でも、トラップを設置したままだ」
「そんなの明日でいいよ」
「それだともしものことがあった時に困るだろ?」
「じゃあ、代わりに私が行くよ」
「そうか。でも、女の子の一人歩きはいつの時代も危ないから僕も同行させてもらうよ」
「ダーメ! お父さんはここにいて!!」
「お前、何か隠してないか?」
「そ、そんなことないよー」
「そうか。じゃあ、代わりにキューを同行させる。これならいいだろう?」
「うーん、どうだろう。ねえ、キューちゃんって心臓ある?」
「ないよ。一応、空間だから」
まあ、なんでキューに自我があるのかは分からないけど。
「そっか。なら、いいよ」
「分かった。キュー」
「キュー!」
「この娘の護衛を頼む。あっ、キョンシー姉妹でも良かったかな?」
「あの二人はお父さんの護衛だから無理だよ」
「そうか。そうだったな。キュー、家に帰るまで気を抜くなよ」
「キュー!!」
「じゃあ、気をつけてな」
「はい! それじゃあ、いってきます!!」
うーん、心配だなー。アリシア・ブラッドドレイン(吸血鬼)に今から事情を説明しようかなー。
「んー? もしや我の力が必要だったりするかー?」
「なあ、アリシア。あいつ、誰の娘だと思う?」
「どうした? 急に」
「いや、なんとなく気になってな」
「ふうむ、たしか名前などの個人情報はタイムパラドックスが起きないよう、お前に伝えていないのだったな」
「ああ、そうだ」
「だが、やろうと思えば誰の娘なのか特定できる。そうだな?」
「まあ、一応星の王だからできないことはないな」
「ふむ。では、こうしよう。我の血液占いでヒントだけ知る」
「血液占い? 血液型占いとどう違うんだ?」
「はじまりの吸血鬼が暇つぶしに作った占いだ」
「そうなのか。で? どうやって占うんだ?」
「我の目で占う対象を見る。ただそれだけだ」
「それはDNA鑑定みたいなものか?」
「違う。そもそも血というのは情報やエネルギーの塊であってだな」
「えっと、要するに血を見ればだいたいのことが分かってしまうんだな?」
「その通り! まあ、我は名前が四文字だから三文字のやつより制限が多いのだがな」
「そうなのか。ちなみに三文字の名前のやつの制限はどれくらいなんだ?」
「核心が分からない。それ以外は分かる」
「そうか。じゃあ、四文字の名前のやつは?」
「痒いところに手が届かない」
「それは辛いな」
「だろう! いやあ、なんとかしてほしいものだ」
血液占いか。僕にもできるかな?




