一人で目的地まで行けそうか?
雲の上。
「フーリン、君は一応鳥だ。だから、コツさえ掴めれば自由に飛べる」
「ピヨ?」
「本当かって? 本当だよ。じゃあ、そろそろ練習始めようか」
「ピヨ!」
「じゃあ、まずは翼を大きく広げて」
「ピヨ!」
「そうそう。で、次は高速で翼を羽ばたかせる」
「ピヨ!!」
「そうそう、その調子。じゃあ、手離すね」
「ピヨ? ピヨー!!」
僕は地面に向かって落下するフーリン(フリカムイの雛鳥)のそばでフーリンにアドバイスをする。
「大丈夫。怖くないよ。さぁ、体を風に任せて」
「ピヨー! ピヨピヨ!」
「大丈夫。地面にぶつかりそうになったら僕が受け止めてあげるから。ほら、翼を広げて」
「ピ、ピヨー」
「よし、いいぞ。よし、じゃあ、目を開けてごらん」
「ピヨー」
「どうだ? 町がいつもより小さく見えるだろう」
「ピ、ピヨー」
「よし、じゃあ、僕が通ってる学校の屋上まで行こうか」
「ピ、ピヨー?」
「なんでそこに行くのかって? うーん、それは……なんとなくだ」
「ピヨピヨ?」
「なんとなくはなんとなくだよ。ほら、行くぞー。それー」
「ピ、ピヨピヨ!」
フーリンは体をばたつかせて方向転換する。
「フーリン、今より高く飛びたい時は翼を羽ばたかせればなんとかなるぞ」
「ピ、ピヨ」
「そうそう。で、そのままでいい時は翼を広げたまま何もしない」
「ピヨ!」
「そう。それでいい。で、右の行きたい時は右側の翼を少し上げて、左に行きたい時は左側の翼を少し上に上げれば少しずつ行きたい方向に曲がるぞ」
「ピヨピヨ!」
「え? 今は真っ直ぐ飛ぶのがやっと? うん、まあ、とりあえずそれだけできれば十分だよ」
よしよし、とりあえず高度があれば一人で飛べるようになったな。
「あっ」
「ピヨ?」
「ごめん、フーリン。一人で目的地まで行けそうか?」
「ピヨピヨピヨピヨ!」
「え? 無理? 大丈夫。このまま真っ直ぐ行けば辿り着けるから」
「ピヨピヨ!」
「フーリン、僕を見るな。前を見ろ」
「ピ、ピヨ」
「よし、いい子だ。じゃあ、ちょっとアレするからそのまま目的地を目指してくれ」
「ピヨ?」
「え? 何をするのかって? それは後で教えるよ。じゃ」
「ピ、ピヨー!!」
トラップ設置完了。さてと、目的地に行くとするか。
フーリンが学校の屋上に着くまでの間、僕の仕掛けたトラップを潜り抜けた数人の狙撃手が何度かフーリンを打ち落とそうとしていたが、僕がフーリンの周囲に張っている反射結界のおかげでフーリンは無事目的地に辿り着けた。
「よしよし、よく頑張ったな。偉いぞ、フーリン」
「ピヨピヨー♡」
「よし、じゃあ、帰るか」
「ピヨ!」
「え? さっきなんで途中で離脱したのかって? えーっと、それはだなー。変な虫がいたから追い払ってたんだよ」
「ピヨ?」
「本当だよ。あっ、もう少し練習したいのならまた雲の上まで連れて行くけどどうする?」
「ピ、ピヨー……」
「そうかそうか。今日はもう疲れたか。よし、じゃあ、帰るか」
「ピヨ!!」




