知り合いか?
朝食を食べ終わるとフーリン(フリカムイの雛鳥)はすぐ庭に向かった。また空を飛ぶ練習をするのかな?
「ピヨピヨ! ピヨピヨ!」
「なんだ? フーリン。空を飛べるようになったのか?」
いや、違う。フーリンは僕に伝えているんだ。空を覆う暗雲の中にいる怪しい存在がこちらを直視していることを。
僕が庭に向かうとそこには鬼姫がいた。彼女は腕を組んだ状態でこう呟いた。
「面倒なやつが来たわね」
「知り合いか?」
「まあね」
「勝てそうか?」
「勝てるけど、戦いの余波でこの町壊滅するわよ」
「そうか。じゃあ、キューの力を借りないといけないな」
「そこまでしなくても、ちんちくりんの結界があればなんとかなるわよ」
「おや? もしかして私の力が必要なんですか?」
座敷童子の童子がいつものように音もなく現れる。
「誰もあんたの力を借りたいだなんて言ってないわよ」
「あっ、そうですか。では、私は雅人さんと一緒に散歩でもしてきますね」
「あれ? もしかしてアレが怖いの?」
「いいえ、全然」
「あっ、そう。じゃあ、とっとと結界張りなさいよ」
「嫌です」
「はぁ!? なんでよ!?」
「あなたの命令されるのが嫌だからです」
「ちっ! こいつ!!」
「まあまあ、落ち着けよ、二人とも」
「あたしは落ち着いてるわよ! でも、こいつが!!」
「こいつ? いったい誰のことですか?」
「ほらね! なんとかしてよ! 雅人!!」
「分かった。童子、お前が昔鬼姫にされたことを忘れろとは言わない。でも、こいつはこいつなりにお前のこと頼りにしてるんだよ」
「ちょ、ちょっと! 余計なこと言わないでよ!!」
「事実だろ? 照れるなよ」
「は、はぁ!? 別に照れてなんかないわよ」
「見ろ、耳が真っ赤になってる」
「分かりやすいですね」
「ちょ、ちょっと! 雅人! あんた、どっちの味方なのよ!!」
「どっちもだ。ということで、二人の力を貸してくれ」
「は、はぁ? あんなやつ、あたしと結界があれば」
「はい、喜んで」
「ええ……」
「鬼姫はどうだ?」
「はぁ……はいはい。やればいいんでしょ、やれば」
「よし、これで……」
「ピヨピヨ!」
「ん? フーリンも一緒に戦ってくれるのか?」
「ピヨ!」
「そうかそうか。でも、危ないからお前はここにいろ」
「ピヨ……」
「ごめんな。でも、僕はお前が傷つくところを見たくないんだよ。だから、家でおとなしくしててくれ」
「ピヨー……」
「大丈夫。すぐ帰ってくるから」
「ピヨヨ……」
「はぁ……キュー」
僕がキュー(丸みを帯びた黒いサイコロ型の空間。なぜか自我がある)を呼ぶとキューはニコニコ笑いながら登場した。
「キュー!」
「フーリンをお前の中に入れてやってくれないか?」
「キュー!!」
「ということで、フーリンはこの中で僕たちの戦いを見守っててくれ。できるか?」
「ピヨ!!」
「よし、じゃあ、行こうか」
「ええ」
「はい」
「ピヨ!」
「キュー!」




