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だね

 雅人まさとはバイト終わりに例の公園に足を運んだ。

 今日も野良猫たちが縄張り争いをしているかもしれないと思ったからだ。

 彼が公園の方に目をやると、野良猫たちがになって会議のようなものをやっていた。

 なんだろう? 何かあったのかな?

 彼が野良猫たちに近づこうとした時、彼は小枝を踏んでしまった。

 小枝にパキッと亀裂が入ると同時に小枝は真っ二つになってしまった。

 その音を聞いた野良猫たちは一斉にその場からいなくなった。


「僕、何かしたかな?」


 彼は点滅する蛍光灯に集まる虫たちの方に目をやった。

 感電という言葉と意味を知らない虫たち。

 それに突進していくさまを無謀だと思うものもいれば勇敢ゆうかんだと思うものもいる。

 つまり、一つの現象に対して何を思うのかは人それぞれということである。

 先ほどの野良猫たちが会議ではなく、何か別のことをしていた可能性もある。

 だから、もう余計な詮索せんさくはやめよう。

 彼はそう思うことにした。

 彼が家に向かって歩き始めると、草むらから野良猫たちの眼光が現れた。

 それが彼を見ていたのかどうかは誰も知らない。


 *


「ただいまー」


「ニャー!」


 雅人まさとが帰宅すると、白猫が彼の胸の中に飛び込んだ。


「おっとっと。危ない、危ない。なんだー? 僕の帰りを待っててくれたのかー?」


「ニャー♡」


 白猫は彼の胸にほほをスリスリとこすりつけた。

 彼は白猫の頭を優しく撫でる。

 フワフワしている白い毛の下にはちゃんと骨があり、脳もある。

 彼は白猫の耳をフニフニしてみた。

 すると、白猫は彼の胸を肉球でフニフニした。


「あははは、やめろよー。くすぐったいからー」


「おかえり、お兄ちゃん。いつもより二十秒くらい遅かったね」


 夏樹なつき雅人まさとの実の妹)は白猫を方を見ながら、彼の近くまで歩いてきた。


「ただいま。ちょっと公園に寄ってたから遅くなった。ごめんな、心配させて」


「公園? 何かあったの?」


 何かあったというか、いたというか。


「野良猫たちが会議みたいなことをしてたから何してるかなーって近づいたら気づかれて逃げられた」


「へえ、そうなんだ。まさか、こいつに関係してたりしないよね?」


 それはない……とは言い切れない。


「多分、それはないと思うぞ。もしそうなら、今頃僕の後をついてきて……」


 彼が最後まで言い終わる前に外から野良猫たちの鳴き声が聞こえ始めた。

 それは何かを取り返すために一致団結しているかのような鳴き声だった。


「……フラグ……回収」


「だね……」


 二人は顔を見合わせると深いため息をいた。

 白猫は彼の胸の中で「ニャー♡」と鳴いた。

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