成長したら変な虫があんたに群がるわよ
朝……私の部屋……。
あー、もう朝か……。起きなきゃ……。
「ん? 私の手、なんか黒くなってる」
「おはよう。私」
「ん? あれ? なんで私が私の目の前にいるの?」
「それはね……はい、鏡」
「あー、ありがとう。うーんと、これってあんたがやったの?」
「ええ、そうよ」
「そっか。ということは今の私はあんたの影ってことね」
「ええ、そうよ。というか、リアクション薄いわね。もっとこう、なんかないの? 私の体を返して! とか」
「あんたが人面瘡だったらとっくに潰してるわよ」
「怖いこと言わないでよ」
「私が私に怯えてどうするのよ。というか、早くしないと遅刻しちゃうわよ」
「あっ、そうだった。えーっと、たしか制服は……うーん、それにしても貧相な体ね。ねえ、ちょっとだけ成長しちゃダメ?」
「成長したら変な虫があんたに群がるわよ」
「あー、それは気持ち悪いわね。というか、雅人以外の男に近づかれたくないわ」
「だよねー」
「あなた、影になってもブラコンなのね」
「影になろうと動物になろうと植物になろうと虫になろうと私は変わらないわよ。というか、あんたもそうでしょ?」
「ええ、まあ、そうだけど」
「夏樹ー! 早く朝ごはん食べないと遅刻するぞー!」
「はーい! 今行くー!!」
「ふわあ……あー、眠い。じゃあ、今日一日よろしくね、私。それじゃあ、おやすみー」
「え? あー、うん、分かったわ」
どうしてあなたはそんな状態でマイペースでいられるの? はぁ……これじゃあ、あなたと入れ替わった意味ないじゃない。




