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ケイちゃん
一番水の精の面倒を見ていたのは座敷童子の童子だった。そのおかげなのか水の精は数日ですっかり元気になった。
「なあ、童子」
「何ですか?」
「そろそろ水の精を逃がしてやったらどうだ?」
「……ま、まあ、そうですね」
「なんだ? お前、もしかして水の精とお別れしたくないのか?」
「な、何言ってるんですか! この私がどこにでもいる水の精との別れを惜しんでいるとでも言いたいのですか!?」
「うん」
「そ、そんなことありませんよ」
「絶対?」
「は、はい」
「いや、別に嫌ならいいんだぞ?」
「え? いいんですか?」
「ああ。外は危ないから独り立ちするまで面倒見てもいいと思うぞ」
「そ、そうですか。良かったですね、ケイちゃん」
「ケイちゃん?」
「軽雨……つまり小雨の日にやってきたのでケイちゃんです」
「なるほど。そういうことか。いい名前だな」
「え? あ、ありがとうございます」
座敷童子の童子はケイちゃん(水の精)を手の平の上に乗せるとニコニコ笑っていた。




