求愛 ミラクルコトドリ登場
なーにが美人四天王だ! 私のお兄ちゃんを独り占めして! あー、ムカつく!! ん? なんかチェンソーの音が聞こえる。誰か伐木してるのかな? あっ、なんか工事現場の音も聞こえる。でも、このへん工事なんかしてたっけ? あれ? 今度はカメラのシャッター音が聞こえる。
「もう! さっきから何なの!! うるさいから静かにして!」
私がそう言うとそれらの音はピタッと止まった。しかし、それから数秒後いろんなところから私の声が聞こえてきた。
「どうしてそんなこと言うの?」
「そんなことできませーん」
「は? 意味分かんないんですけど」
「そんなことより、こっち来なよー」
「おいで、おいでー」
「うん、すごくかわいい。家にお持ち帰りした後、ぐしゃぐしゃにして、机の上に飾りたい」
「お菓子好き?」
「飲み物、何がいい?」
「月と太陽、どっちが好き?」
「あなたはどこから来たの?」
「今、彼氏いる?」
「好きな異性のタイプ教えてー」
「今日はいい天気だねー」
「レディーファーストって昔と今じゃ意味違うよねー」
「あっ! 猫さんだー!」
「スパイの語源って何だっけ?」
「カレーの隠し味って何が一番有名なのかなー?」
『ねえ、君のこと教えてよ』
な、何なの? 私に何か恨みでもあるの? 怖いよ、助けて、お兄ちゃん!!
「夏樹、こんなところで何してるんだ?」
「あっ! お兄ちゃん! あのね! なんかね、私の声でね、私に話しかけてくる連中がいるの!!」
「え? あー、そういえば、このへんはやつらの住処だったな。おーい、みんなー! 元気にしてるかー!」
『あっ! 雅人さんだ! お久しぶりです!』
「え? 何? 鳥?」
「コトドリだよ。でも、ただのコトドリじゃないんだよ。こいつらは」
『どうも! はじめまして! ミラクルコトドリです!!』
「そうそう、それそれ。まあ、普通のコトドリとの違いは気配を消したり、別の時間軸や異世界、別次元に行けたり、物体をすり抜けたり、分身したりするところかな」
「あー、だからミラクルコトドリなんだ」
『その通り!!』
「あ、あはは。えっと、じゃあ、私の声真似してたのは何なの?」
「あれは求愛行動だよ。でも、今回みたいに求愛対象の声をマネすることはほぼないよ」
「え? じゃあ、いつもはどうしてるの?」
「いろんな音を出してるよ。工事現場の音とかカメラのシャッター音とか」
「あっ、そっか。じゃあ、私が聞いた音は全部ミラクルコトドリが出してたんだね」
「まあ、そういうことだ。よし、じゃあ、帰るか」
「うん!」
『うん!!』
「もうー! 私の声真似しないでよー!」
『あははははは、ごめんなさーい』
「待てー! 逃げるなー!」
うんうん、今日も平和だなー。まあ、一匹だけミラクルコトドリじゃないやつもいたんだけどな。まっ、もう処分したけど。




