泥棒猫
白猫が僕の膝で丸くなっている。
「あははは、これじゃ動けないなー」
「こら! 泥棒猫! お兄ちゃんから離れろー!」
夏樹は白猫を僕から離そうとしたが、猫パンチで突き放されてしまった。
「猫のくせに……生意気!!」
「落ち着けよ、夏樹。多分、今のはお前が急に襲いかかってきたから、びっくりしたんだよ。なあ? そうだよなー?」
白猫は彼の膝の上で「ニャー♡」と鳴いた。
「お兄ちゃん! 多分、それ演技だよ! なんかわざとらしいもん!」
「そうか? 別に普通だと思うけど」
ダメだ、私の話を聞いてくれない。
お兄ちゃんは私より猫の方が大事なの?
いや、違う。
きっとこの泥棒猫がお兄ちゃんに何かしたんだ。
そうだ、そうに違いない!
「お兄ちゃん、ちょっと私に抱っこさせてー」
「ああ、いいぞ」
彼が白猫を抱き上げると、白猫は彼女の顔に猫パンチをした。
「くっ! こ、こいつ……! あ、あははは、元気だねー」
「そうだなー」
白猫は夏樹の顔を踏み台にして、彼の膝の上に戻った。
「おいおい、そんなに僕の膝の上が好きなのかー?」
「ニャー♡」
彼女は彼が白猫の頭を撫でているのを歯ぎしりしながら、見ていた。
こいつ、私がお兄ちゃんに近づけないようにしてる。
そっちがその気なら、私も遠慮なくいかせてもらうよ。
「お兄ちゃーん、私の頭も撫でてー」
「しょうがないなー。よしよし」
どうだ、見たか!
私のお兄ちゃんは私だけのもの!
例え、猫だろうと容赦はしないよ!
「ニャー♡」
「なっ! こ、こいつ今、お兄ちゃんのこと噛んだ! 首筋噛んだ!」
こいつ、できる!
「あー、今のは甘噛みだな。別に痛くないから気にするな」
「で、でも!」
あっ、こいつ今、悪い顔した!
私のことバカにしてる!
「大丈夫、大丈夫。僕には鬼の力が宿ってるんだから」
「ま、まあ、それはそうだけど……」
こいつ、やっぱりお兄ちゃんのことを狙ってる。
猫なんかに負けられない!
だって、お兄ちゃんは私の……私だけのものなんだから!