自増病
夜になると『薪宮 東子』が増殖した。年齢、身長、体重、性格、口調、着ている服……とにかく性別以外全て本体とは異なる存在が本体からどんどん登場している。
「……えーっと、これはいったい」
「私が三歳になった日からこうなんだよ。医者共は増殖病って呼んでるけど、私は自増病って呼んでる」
「たしかに自分が増える病気だな」
「お兄さん、誰ー?」
「お腹空いたー。ハ○ピーターン食べたーい」
「ねえ、この絵本、読んで」
「誰でもいい! 私と戦えー!!」
「えーっと、水兵リーベ僕の船……」
「おい、貴様! 私の下僕にならないか?」
「魔法少女! マジカルイースト! あなたのハートをパンにしちゃうぞ♡」
うーん、なんか既視感あるな。あっ、そういえば前に僕が大量発生した時があったな。あれはたしか自室にある姿見を見たせいだったかな?
「なあ、雅人。こいつら、どうすればいいと思う?」
「朝になったら消えるのか?」
「ああ。でも、うるさいから眠れないんだよ」
「なるほど。えっと、原因は分からないんだっけ?」
「ああ」
「そうか。じゃあ、とりあえず全員と話してみるよ。あっ、君は寝てていいよ」
「え? いいのか?」
「うん、いいよ。任せて」
「そ、そうか。じゃあ、おやすみ」
「うん、おやすみ」
彼女が自室のベッドに横になると本体から出てきた娘たちが僕のところにやってきた。今日は朝までコースかな。




