薪宮 東子
ここか。なんというか今にも崩れそうな家だな。
「おい、もしかしてお前か? 佐藤のお気に入りってのは」
僕が歪んでいるインターホンを鳴らそうとすると長身の女子高生に話しかけられた。
「え? あー、まあ、そうだけど。ところで君はいったい」
「私は『薪宮 東子』。薪宮流護身術の継承者だ」
「へえ、そうなんだ」
「ああ。まあ、その話は置いといて。私の病気を治してほしいんだ」
「病気か。うーん、でも、ぱっと見どこも悪くなさそうだぞ」
「夜になれば分かるさ。ということで今日はうちに泊まっていけ」
「ん? なんでそうなるんだ?」
「私の病気は夜にならないと症状が出ないし夜のいつ頃なるのかは私にも分からないからだ」
「いや、でも、今日会ったばかりの女子の部屋に泊まるのはさすがに」
「気にするな!」
「いや、気にするよ。あっ、じゃあ、せめてご両親にあいさつを」
「両親は私の病気を治す薬を探しに行った数ヶ月後に死体になって戻ってきた。だから、私の両親はもうこの世にはいない」
「そうか……。なんかごめんな」
「いや、いい。あっ、夜になるまでゆっくりしてていいぞ。まあ、ボロい家だからあんまりくつろげないと思うけど」
「住めば都」
「え?」
「僕はそんなの気にしないよ。だから、自分の家をボロい家だなんて言うな」
「雅人、お前……」
「ところでこの扉どうやって開けるんだ? 無理やり開けると壊れそうで怖いんだが」
「え? あー、これはドアノブを手で少し上に上げながら回すと開くんだよ」
「なるほど」
こいつは私の部屋に何秒いられるかな……。




