巨大な肉の塊
深夜。巨大な肉の塊が現れた。それは人や動物、建物を破壊することなくただただ食べ物を求めて移動している。
「……まあ、こうなるよな。童子、肉のお化けを結界に閉じ込めてくれ」
「分かりました」
「鬼姫」
「なあに?」
「どうにかしてあいつの動きを止めてくれ」
「オッケー」
「夏樹」
「ふわあ……なあに?」
「ごめんな、眠いよな。でも、本体にたどり着くにはお前の髪の力が必要なんだ」
「そっかー。なら、早く来て。お兄ちゃん。私の体内に」
「分かった。じゃあ、行くぞ」
「いいよ、来て♡」
ああ、お兄ちゃんと一つになっていくのが分かる。お兄ちゃんを私の体内に永遠に閉じ込めたい。でも、そんなことしたらあんなことやこんなことができなくなっちゃうからやめておこう。
「……羨ましい。私も雅人さんと一つになりたい」
「ちんちくりん、本音が漏れてるわよ」
「何か問題ありますか?」
「これからあの肉の塊をどうにかしないといけないのよ? 時と場所を考えて発言しなさいよ」
「好きな人の前で本音を言って何が悪いんですか?」
「表情とセリフが一致してないわよ。少しくらい笑いなさいよ」
「私の笑顔が見たいんですか? それなら会員になってください」
「会員制なの!? ちなみに年会費はいくら?」
「心臓を一つ売れば会員になれます」
「条件きっつ! でも、妖怪なら余裕でクリアできるわね」
「妖怪の場合は魂を一ついただきます」
「あっ、そう。で? 雅人は会員なの?」
「雅人さんは会員ナンバーゼロなのでいつでも私の笑顔を見られます」
「いいなー。あたしもあんたの笑顔見たーい」
「では、あなたの魂をください」
「魂かー。歯じゃダメ?」
「ダメです」
「えー。じゃあ、角!!」
「……ダメです」
「んー? じゃあ、目!!」
「……考えておきます」
ええ……。
「あー、ごめん。今の忘れて」
「分かりました」
「ねえねえ、見て見て! 童子ちゃん! 私、今お兄ちゃんと合体してるよ!!」
「はいはい」
「あははははは! 夏樹ちゃん、今日はいつもより上機嫌だねー。じゃあ、そろそろ始めよっか」
「うん!!」
「あの、どうしてあなたが仕切ってるんですか?」
「細かいことは気にしない! まっすぐゴー!!」
「はぁ……はいはい」




