ラピモスの復活
数日後、マリアナ海溝から二メートルほどの蛾が大量発生した。やつらは昼夜問わず世界中を飛び回り、人々や町を襲撃している。一応、通常兵器で倒せるが音速で動くため当てるのは難しい。
「虫博士、やつらは虫なんですか? 海から出てきたそうですが」
「虫というより尖兵だよ、あれは」
「尖兵? ということはこれから本隊がやってくるのでしょうか?」
「本隊は来ないよ」
「来ない? じゃあ、いったいこれから何がやってくるんですか?」
「……絶望だよ」
最近、テレビをつけるとだいたいこんな感じのものしか流れていない。色々考察するのはいいけど、あまり人々を不安にさせないでほしいな。
「ねえ、お兄ちゃん。あいつらに名前あるの?」
「地球の本には『ラピモス』って書いてあったな」
「そっか。じゃあ、あいつらの親玉はもっとでっかい蛾なんだね?」
「いや、もっと恐ろしい存在だよ」
「そうなの?」
「ああ」
「勝てそう?」
「分からない。でも、僕が負けたらきっとこの星は終わる」
「そ、そんな!」
「大丈夫だ、僕はそう簡単に死なないから」
「それはまあ、そうだけど……」
あっ……。
「夏樹、僕ちょっと出かけてくる」
「待って! 私も行く!!」
「大丈夫だよ。ちょっとスーパーに行くだけだから」
「……目覚めたんだね、やつが」
「……ああ」
「一人で行くの?」
「ああ」
「理由は?」
「お前に万が一のことがあったら僕はきっと立ち直れない。だから、一人で行くんだよ」
「そっか。分かった。必ず帰ってきてね」
「必ず、か。まあ、自力で帰れない時は連絡するよ」
「分かった。じゃあ、いってらっしゃい」
「いってきます」
ステラ、もしもの時は逃げるんだぞ。
私、パパから離れたら死んじゃうから絶対逃げないよ。
そうか。けど、今回は本当に勝てるかどうか分からないぞ?
今日死んだとしてもパパと一緒に死ねるんだったら別にいいよ。
お前なかなかすごいこと言うな。
そうかな? 別に普通だよ。
普通ね。よし、じゃあ、さっさと終わらせて帰るか!
うん!!




