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秘蔵写真
お兄ちゃん遅いなー。早く帰ってこないかなー。
「夏樹……夏樹……」
「……なんか、お母さんの声が聞こえるような気がする」
「夏樹、早く寝なさい」
「お兄ちゃんが帰ってくるまで寝ないよ」
「あなたは相変わらず雅人のことが好きなのね」
「そうだよ。悪い?」
「いいえ、悪くはないわ。ただ……」
「ただ?」
「そろそろ兄離れしたらどう?」
「いーやーでーすー」
「そう。じゃあ、雅人があなたを選ばなかったらどうするの?」
「その時は……この世界を壊すよ」
「そんなに好きなの?」
「うん、好きだよ」
「そう。でも、ずっと玄関にいたら風邪ひくわよ」
「大丈夫だよ。慣れてるから」
「そう。あっ、そうだ。雅人に伝えてほしいことがあるんだけど」
「自分で伝えなよ」
「残念ながらそんな時間はないのよ。だから、お願い。伝えてくれたらあなたと雅人の秘蔵写真あげるから」
「それ、どんな写真?」
「あなたたちが二人でお絵かきしてる時の写真よ」
「お絵かきか……分かった。で? 私は何を伝えればいいの?」
「ありがとう。えっとね……」




