卑怯な手?
座敷童子『桜子』。彼女のことを座敷童子の童子から聞かされても僕は彼女との約束をなかったことにはしなかった。なぜなら、彼女と戦うことでその娘も知らないその娘のことを知ることができるかもしれないからだ。
「本当に桜子と戦うんですか?」
「ああ」
「そうですか。では、私を倒してから行ってください」
童子は玄関で靴紐を結んでいる僕の前に両手を広げて立ち塞がる。
「童子」
「何ですか?」
「僕はお前を傷つけたくない。だから、少し卑怯な手を使うぞ」
「卑怯な手?」
僕は彼女を優しく抱きしめると彼女の耳に触れた。
「な、何ですか! 急に!!」
「頼む、行かせてくれ」
「だ、ダメです! 今回は絶対にダメです!!」
「そうか。じゃあ、僕が帰ってくるまでおとなしくしててくれ」
僕が耳にあるツボを押すと彼女は意識を失った。
「ごめんな。童子。でも、こうでもしないとお前は絶対僕を行かせてくれないだろう?」
「お兄ちゃん、もう行くの?」
「ああ」
「そっか。あっ、童子ちゃんのことは私に任せて。それとなるべく早く帰ってきてね」
「それを実現できるよう努力するよ」
「分かった。いってらっしゃい、お兄ちゃん」
「いってきます」
僕は夏樹(僕の実の妹)に見送られながら家を出た。さてと、じゃあ、行きますか。




