迷子の女の子? まさか!!
早く雅人さんに桜子のことを伝えなければ。
「夏樹さん! 雅人さんは今どこにいますか!!」
「え? お兄ちゃん? うーんとねー、迷子の女の子を交番まで送り届けるっていうのが終わったら帰ってくると思うよー」
迷子の女の子? まさか!!
「ありがとうございます! では、私はこれで!!」
「あー、うん、分かった」
なんだろう、何かあったのかな? あー、やっぱり家が一番落ち着くなー。
*
桜子が勝手に家を出られないことは知っていますが、もしものことがあったらと思うと胸が苦しくなります。雅人さん、彼女は危険です。いつものように攻略しようとしないでください。彼女は座敷童子の中で最も恐れられている存在なのですから。
「あっ、童子ちゃんだー。おーい! 童子ちゃーん! こっちこっち!」
「なっ! あなた、どうやって外に!」
「知りたい?」
「なんだ、童子の知り合いか?」
「うん、そうだよー」
「そうか。それならそうと早く言ってくれればいいのに」
「雅人さん! 今すぐその娘から離れてください!!」
「ん? なんでだ?」
「きっと私と雅人くんが仲良くしてるから嫉妬してるんだよー」
「そうか。なら、お前もとなり座れよ」
「違います! 私は別に嫉妬なんか!」
「童子、いいからこっちこい」
「は、はい、分かりました」
私は公園のベンチに座っている雅人さんのとなりに座ると桜子の方に目をやった。
「雅人くん、私喉乾いちゃったー。何か買ってきてー」
「はいよー」
「いってらっしゃーい」
「……あなたはいったい何をしようとしているのですか? それよりどうやってここに」
「前者の答えは雅人くんと仲良くなろうとしているで後者の答えはおつかいを頼まれたからだよ」
「おつかい?」
「うん、そうだよ」
「そうですか。それで? あなたがここに来る前に私に言っていた面白いものとは何なのですか?」
「ん? あー、それはねー」
桜子は自分の影の中にしまっていた銃を取り出すと私に銃口を向け、引き金を引いた。
「どうして何もしないの?」
「あなたから殺意を感じられなかったからです」
「もし弾が入ってたら童子ちゃん死んでたよ?」
「あなたが愛用していた妖怪殺しの弾が入っていればですけどね」
「愛用していたじゃなくて愛用している、だよ」
「それは本当ですか?」
「うん、本当だよ。ほら、いつの時代も護身用の武器って必要でしょ?」
「そうですね。それで? 今の影を使った戦法が面白いものですか?」
「まあねー」
「そうですか。まあ、とにかく雅人さんに戦いを挑むような愚行だけはしないでくださいね」
「したよー」
「はい?」
「今さっき雅人くんと戦う約束したよー」
「なっ! このバカ! 戦闘狂! いったい何を考えているんですか!!」
「私ねー、強いやつが恐怖を抱く瞬間がすっごく好きなのー。だから、約束したんだよー」
「はぁ……まったくあなたという人は」
「ごめんなさーい。許してー」
「あー、もう、本当にあなたは昔から」
「ただいまー。ん? なんだ? 何かあったのか?」
「何にもないよー」
「そうか。なら、いいんだが」




