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嘘は良くないよー

 朝ごはんを食べて、歯磨きをして、身支度みじたくを済ませて、カバンを持ったら玄関へ。


「忘れ物ですよ」


 座敷童子の声が聞こえたため、僕は振り向く。


「えっと、それはなんだ?」


「何って……お、お弁当ですよ」


 弁当?


「えっと、自分で作ったやつがあるから……」


「いらないんですか? そうですか……」


 な、なんだよ、そんな悲しそうな顔するなよ。


「え、えっと、今日は体育があるから、弁当二つくらいあった方がいいかなー」


「そうですか。では、私の手作り弁当を差し上げます」


 本当は体育の授業なんてない。

 けれど、座敷童子を悲しませたくない。

 だから、僕は小さなうそをついた。


「ありがとう。えっと、じゃあ、いってきます」


「あっ、待ってください」


 まだ、何か、あるのかな?

 僕が苦笑くしょうしながら、振り向くと座敷童子が両手を広げていた。


「えっと、これはいったい……」


「いってらっしゃいのハグです」


 そんなの今までしてたか?

 いや、していない。


「えっと、しないとダメなのか?」


「そ、それはその……。きょ、今日はそういう気分なんです」


 そういう気分って、どういう気分だよ。


「……分かったよ。えっと、じゃあ……」


「お兄ちゃーん! 私も抱きしめてー!」


 妹の夏樹なつきがやってきた。

 タイミングが良すぎる。

 さては、のぞき見してたな。


「はいはい、分かったよ。それじゃあ、行くぞ」


 僕が二人を抱きしめる。

 夏樹なつきは満足そうにニコニコ笑う。

 座敷童子は少し恥ずかしそうに頬を赤く染める。

 どうして僕は朝からこんなことを……。

 別に嬉しくないわけじゃないんだけど、少し恥ずかしいな。

 慣れてないから……。

 いや、むしろ慣れない方がいいのかな?

 けど、これはただのスキンシップであり、挨拶あいさつでもあるから……。

 あー! もうー! よく分からん!


「えっと、それじゃあ、いってきます」


「いってらっしゃい!」


 妹が元気にそう言うと、座敷童子は僕の制服のそで口をつかんだ。


「なんだ? まだ何かあるのか?」


 座敷童子はうつむいている。


「……えっと……その……もう少しかがんでください」


「え? あー、分かった」


 こいつ、いったい何をたくらんで……。


「……チュ」


 は?

 ちょ、ちょっと待て。

 今、僕は何をされた?

 お、落ち着け。

 深呼吸、深呼吸をしよう。


「あれ? ねえ、童子わらこちゃん」


「な、何ですか?」


 夏樹なつき。お願いだから、やめてくれ。


「今、お兄ちゃんのほっぺに……」


「あー! もうこんな時間だー! それじゃあ、いってきまーす!」


 すまない。けど、いきなりあんなことされたら動揺どうようを隠し倒すのは無理だ。


「あっ、うん、いってらっしゃーい」


 私、どうしてあんなことを。


「ねえ、童子わらこちゃん」


「は、はい!」


 まずい! まずい! まずい! まずい!


「さっき、お兄ちゃんのほっぺにチューしてなかった?」


「し、してませんよ、そんなこと」


 うそつき……。


「えー、本当かなー?」


「ほ、本当です」


 あっ、そっぽ向いた。


「へえ、そうなんだー。じゃあ、どうして私の目を見てくれないのー?」


「そ、それはその……」


 あははは、照れてる、照れてる。

 可愛いなー。


「別に恥ずかしがらなくてもいいんだよ? 童子わらこちゃんも、お兄ちゃんのこと好きなんでしょ?」


「そ、そんなことはありません! あんなガキなんて私の好みじゃ……」


うそは良くないよー。ねえ、本当はどうなの? ねえねえ」


 し、しつこいですね。


「し、失礼します!」


「あっ、逃げた! こらー! 逃げるなー!」


 私はいったいどうしてしまったのでしょうか。

 なんだか胸が苦しいです。

 夏樹なつきさんの風邪がうつってしまったのでしょうか?

 彼女は妹から逃げながら家事をこなしていった。

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