テレポート装置
夏樹(僕の実の妹)対人魚の戦いは夏樹が勝利した。人魚は戦いの中で何かを得た。それが何なのかは本人にしか分からない。
「地上もまだまだ捨てたものではありませんね」
「まあねー。で? どうするの? ここに住むの?」
「さて、どうしましょう。私は一応、人魚の国の姫ですからね。私がここに住みたいと言っても私の両親が許さないでしょう」
お母様は許してくださるでしょうけど、お父様は……まあ、難しいでしょうね。
「ふーん、そうなんだ。で? あんたはどうしたいの?」
「はい?」
「お兄ちゃんのこと好きなんだよね?」
「はい」
「じゃあ、まずそのことを親に言った方がいいんじゃないの? どうせまだ言ってないんでしょ?」
「ええ、まあ」
「そう。なら、まずそこからだね。ということで、今日はもう帰っていいよ」
というか、早く帰れ。
「分かりました。では、参りましょうか。私の愛しの王子様」
「おいおい、なんでそうなる? さっきの戦いで脳細胞死滅したのか? それとも頭がおかしくなったのか? まあ、どちらにせよ、絶対に許さないけどね。おい、黙ってないでなんか言えよ。半魚人」
「き、貴様! 姫様になんてことを!!」
「黙れ! 太刀魚!! 塩焼きにするぞ!!」
「は、はい……」
「おい、そろそろなんとか言えよ」
「……『テレポート』」
「なっ! おい! 待て! こら!!」
『ひ、姫様ー!!』
ちっ! あいつ、お兄ちゃんと一緒にどこかにテレポートしやがった!!
「おい! 護衛の魚人ども!! あいつが今使ったのはテレポート装置か?」
「え、ええ、まあ。ただ……」
「ただ、なんだ? 太刀魚。まさか未完成なのか?」
「はい。なので座標の固定がまだできないのです」
「そうか。まあ、あいつの位置が分からなくてもお兄ちゃんの位置は目を閉じていても分かるから別に問題ないな」
「え、えーっと、我々も同行してもよろしいでしょうか?」
私は空間トンネルを開くと護衛の魚人どもにこう言った。
「好きにしろ。ただし! ここから先、何があっても私はお前たちを守らない。それでもいいのならこのトンネルの中に入れ。考える時間は与えるが、私は先に行かせてもらう。じゃあな」
お兄ちゃん、待ってて。今、そっちに行くから。




