させるか!
人魚は僕が生まれ育った家の中を目に焼き付けている。そんなに珍しいものはないと思うんだけど……。
「はぁ……」
「疲れた? 少し休む?」
「いえ、ただ、私はなぜこの家に生まれなかったのだろうと思いまして」
「そうか。でも、もしそうなっていたら君はきっと後悔してると思うよ」
「なぜですか?」
「だって、そうだろ? ほら、近親婚は」
「この国ではできない」
「今のところは、だけどな」
「そうですね。まあ、今の私には関係ありませんが」
人魚は僕を優しく抱きしめるとそのまま浮遊した。
「え、えーっと、もしかして今から拉致されるのかな?」
「拉致なんてしませんよ。私は今からあなたを招待するんです。人魚の国に」
「させるか! くらえ! 『螺旋髪』!!」
「『バブルガード』」
「な、何この泡!? 弾力性がありすぎて貫けない!」
「海にはいろんなものが浮かんでいますからね。この程度のことなら容易にできます」
へえ、夏樹(僕の実の妹)の髪攻撃を防げる技術があるのか。すごいな。うーん、でも、まだ硬化してないんだよなー。
「へえ、そうなんだ。で? あんたの国の技術力は今のところどれくらい進歩してるの?」
「そうですねー。人間がいくら頑張っても到達できないくらい、ですかね」
「そっか。じゃあ、今から硬化させるね」
「硬化?」
「いっけー! 『螺旋髪・硬』!!」
「こ、こんなのありえません! 隕石が衝突しても変わらない弾力性が自慢の『バブルガード』が破られるなんて!!」
「ありえなくないよー。これが現実だよー。改良点が見つかってよかったねー」
「ま、まだです! まだ終わっていません! この『バブルストーム』であなたを必ず倒します!!」
「やれるものならやってみろー!!」
「あなたに言われるまでもありません!!」
『はぁああああああああああああああああああああああ!!』
はぁ……まあ、こうなるよな……。




