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美しい人魚

 誰かが泣いている。誰かは分からないけど、その泣き声がずっと頭の中に響いている。あー、ダメだ。全然眠れない。僕はベッドから出ると声の主を探し始めた。


「……君か。ずっと泣いているのは」


 月がよく見える真夜中に一人で泣いているのは美しい人魚だった。テトラポッドの上で泣いている美しい人魚の容姿は中性的で正直どっちなのか分からない。まあ、別にどっちでもいいんだけどね。


「……ごめんなさい」


「どうして謝るんだい?」


「あなたを無理やり起こしてしまったから」


「えーっと、もしかして君の泣き声、僕にしか聞こえてなかったのかな?」


「はい」


 なるほど。だから、みんなぐっすり眠っているのか。


「そうか。まあ、それは別にいいよ。こういうことはよくあるから。で? 君はどうして泣いているんだい?」


「私、毎日性別や体型が変わるんです」


「……え?」


「容姿は赤ん坊から老人までランダムで変わり、髪の色はもちろん髪の長さや髪質、体質なんかも変わります」


「それは人魚特有の病気なのかな?」


「分かりません。いろんな医者に診てもらいましたけど、原因すら分かりません」


「なるほど。うーん、もしかすると思考が現実化しているのかもしれないね」


「思考が現実化している?」


「うん。まあ、たまたまそういう本を読んだだけだから多分違うと思うけど」


「いえ、もしかすると、そうかもしれません。私、寝る前によくアニメを見るのでおそらくその日見たアニメの影響で体が変わるんだと思います」


 へえ、人魚もアニメ見るのか。


「そうか。なら、これからはある程度コントロールできそうだね」


「そうですね。では、私はこれで」


「ああ」


 後日、美しい人魚から荷物が届いた。瓶の中には人魚の肉と貝殻が入っていた。貝殻に耳を当てると例の人魚の声が聞こえてきた。なるほど。ボイスレコーダーの機能があるのか。


「私のいとしの王子様へ。あの時は急に呼んでしまってごめんなさい。でも、あなたのおかげで変身能力をある程度コントロールできるようになりました。お礼に変身した際に私の体から出る私の肉を送ります。賞味期限は特にないのでいつ食べても構いません。追伸、近々そちらに遊びに行きます。私は一応王族なので護衛が何名か同行しますが、気にしないでください。詳しい日時は後日届く貝殻に録音しておきますので都合の良い日時がありましたら貝殻にお書きいただき、返送してください。では、失礼します。あなたを世界中の誰よりも愛している人魚より」


 うーん、なんというか、自分の肉を他人に送るのもすごいし、それをここまで持ってきた運送業者もすごいな。荷物に生ものって書いてあったからまさかとは思ったけど本当に送ってくるとはね。あー、びっくりした。

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