記念に一枚撮らせて!!
暴走状態の吸血鬼は僕が人間の闇で作った無数の黒い槍と座敷童子の童子の文字の力で作った銀の弾丸の雨と少し先の未来からやってきた僕の娘がどこからか持ってきた大量の聖水である程度ダメージを与えることができた。
「あと少しで倒せそうだな。おい、鬼姫」
「なあに?」
「僕の体、使ってもいいぞ」
「えー、今のあんた女だからちょっとやだー」
「どうしてだ?」
「あたしにはないものがあんたにあるからよ」
「えっと、つまり、足りないものを補いたいから男の方の僕の体を使いたいってことか?」
「え? あー、まあ、そうね」
本当はちょっと違うけど……うーん、まあ、いっか。
「そうか。分かった。じゃあ、この店の結界壊してくれ。そうしないと僕この店から追い出されちゃうから」
「はいはい。というか、最初からそうすればよかったんじゃないの?」
「そんなことしたら店の人に警戒されるだろ?」
「あー、まあ、そうね」
鬼姫はそう言いながら指をパチンと鳴らして店の結界を破壊した。
「よし、これで元に戻れるな」
「あー、待って! 記念に一枚撮らせて!!」
「えっと、もう少しでボス倒せるのにか?」
「あんなの、あたしがいつでもいくらでも倒せるから気にしなくていいのよ。ほら、笑って笑って。はい、チーズ!!」
うーん、これが強者の余裕ってやつなのかな?
「ありがとう。もう元に戻っていいわよ」
「お、おう」
僕が元の姿に戻ると鬼姫は僕に抱きついた。
「な、なんだよ」
「べっつにー。おー、よしよし、いい子いい子」
急にどうしたんだろう。何か変なものでも食べたのかな?
「よし、準備オッケー! で? いつ憑依すればいいの?」
「いつでもいいぞ」
「そうなの? じゃあ、遠慮なく。よっと」
僕に憑依した鬼姫はその場で指の骨を何回か鳴らした。
「よっし! じゃあ、そろそろおいしいところいただきましょうか!!」
鬼姫は鬼火を出すとそれを握りしめた。拳に宿った鬼火は怪しく燃えている。
「これで! お・わ・りだー!!」
鬼姫はボスの足元まで駆けるとバッタのように跳ねた後、ボスのハートめがけて鬼火を宿した拳を放った。
「くらえ! 『確殺鬼火拳』!!」
暴走状態の吸血鬼の断末魔が室内に響き渡った後、ボスの体が縮み始めた。
「はぁ? さっきのでかいやつがこのガキなの? なんかショックー」
どうやら寝息を立てているこの少年が先ほどまで僕たちと戦っていた吸血鬼らしい。
「失礼な! このお方はもうすぐブラッド家の当主になられるお方ですよ!!」
「マーズ、あんたは少し眠ってなさい」
マーズ・ブラッドは鬼姫の言霊の力で眠ってしまった。どうやら言霊の力は吸血鬼にも有効らしい。
「えっと、もうこの部屋から出られるみたいだけど、どうする?」
「あとのことは私がやっておきますのであなたはさっさと雅人さんの体から出ていってください」
あんたってホント座敷童子らしくないわよねー。
「はいはい。ところであんたはいつまでこの世界にいるつもりなの?」
「え? 私ですか?」
「あんた以外に誰がいるのよ。で? どうなの?」
「そうですねー。まあ、そのうち帰ります」
「そのうちねー。まあ、別にいいけど。じゃあ、あとのことよろしくね。ちんちくりん」
「あなたに言われるまでもありません」
「あっ、そう。ところであんた誰と誰の娘なの? あと名前はなんていうの?」
「えっと、それを言うと色々と面倒なことになるので誰にも言えないんです」
「ふーん、そうなんだ。小さいのにしっかりしてるわねー」
「そんなことないですよ。私は私にできることをやっているだけです」
「そう。じゃあ、帰ろっか」
「は、はい!!」
あんたが誰と誰の娘でなんて名前なのかは分からないけど、未来からわざわざ来たってことは近い将来何か起こるんでしょうね。まあ、あたしは興味ないけど。




