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バトンタッチ

 バイトから戻り、玄関で靴を脱いでいると後ろから何者かに抱きしめられた。


「……おかえりなさい」


「ちょ! 耳元で囁くなよ! あー、びっくりしたー」


 座敷童子は僕から離れようとしない。


「すみません。もう少しだけ……」


「断る」


 座敷童子が最後まで言い終わる前に僕はピシャリとそう言った。


「まだ最後まで言っていませんよ?」


「言われなくても分かるよ。もう少しだけ、このまま抱きしめていて欲しい……だろ?」


 座敷童子は僕の背中に自分の背中を預けると、そのまま腰を下ろした。


「はい、その通りです。しかし、その気が失せたのでもういいです」


「そうか。それで? 僕に何か言いたいことでもあるのか?」


 座敷童子が用もなく姿を現すことはない。


「特にありませんよ。あなたには……ね」


「ん? それはいったいどういう……」


 僕が最後まで言い終わる前に僕の中にいる鬼姫ききが僕の精神となかば無理やり入れ替わった。


「あたしに何か言いたいことでもあるの? こけし頭」


「本当は言いたくもありませんが、雅人まさとさんの命に関わることなので、言っておきます。今すぐ雅人まさとさんの体から出ていってください」


 鬼姫ききほニヤリと笑う。


「嫌だ、と言ったら?」


「その時は私の命と引き換えに、あなたをこの世から抹消します」


 相変わらず面白いわね。

 あたしを殺せるやつなんて、どこにもいないのに。


「おー、怖い、怖い。でも、それだと、あんたの大好きなこの体の持ち主も死んじゃうわよ?」


「大丈夫です。私の文字の力で一時的に、あなたと雅人まさとさんを分離させますから」


 そんなことしても無駄なのに。


「分離した後はどうするつもりなの?」


「あなたのたましいを粉々にします」


 甘いわね。


「無理よ。話にならないわ。というか、この体の持ち主と私のたましいは同化しつつあるんだから、分離しても、あたしだけを殺すことは不可能よ」


「そうですか。分かりました。またお会いしましょう。本当は二度と会いたくありませんが」


 彼女がそう言うと、彼女は僕とバトンタッチした。

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