表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/1937

 えっと、僕はいつまでこうしてればいいんだ?


「あのー、夏樹なつきさん。そろそろ離れてもらえませんかねー」


「あと少しだから、おとなしくしてて」


 妹はそう言うと、僕を強く抱きしめた。


「痛い! 痛い! 痛い! 骨がくだける! 骨が砕ける!」


「え? あっ、ごめんね、お兄ちゃん。ちょっと興奮してた」


 興奮?


「そ、そうか。えっと、じゃあ、そろそろ離れてもらっていいか?」


「うん、いいよ」


 妹が僕から離れた瞬間、僕の首筋にが止まった。

 僕はそれを手でつぶした。

 春なのにに刺された。

 僕の血って、おいしいのかな?

 僕は手の平にあるの死骸をティッシュでき取ると、それをゴミ箱に捨てた。


「それじゃあ、いってきます」


「待って」


 えっと、どうして僕は呼び止められたんだ?

 僕はゆっくりと妹の方に目をやった。


「ねえ、知ってる? って、メスしか血を吸わないんだよ」


「そ、それは知ってるよ。それで、えっと、どうして僕の方に近づいてくるんだ?」


 妹は僕が一歩後ろに下がると、一歩前に進んでくる。


「私以外のメスに、お兄ちゃんを渡したくない。それが例え、血の一滴であろうと……」


「む、虫に嫉妬するなよ。あいつらだって生きるためだったり、子孫を残すために必死で……」


 僕はいつのまにか壁際まで追い詰められていた。

 妹は壁に手をつくと、僕の目の前まで顔を近づけた。


「だからって、何をしてもいいの? お兄ちゃんの一部をほいほい他のメスに分け与えるくらいなら、私が全部もらうよ」


「い、一旦落ち着けよ、夏樹なつき。な?」


 僕が妹の両肩に手を置こうとすると、妹は黒い長髪で両手を振り払った。


「おとなしくしてて」


「……え?」


 妹のするどい眼光が僕の体を硬直させた。


「私、お兄ちゃんを傷つけたくないの。だから、おとなしくしてて。分かった?」


「あっ、はい、分かりました」


 妹は僕の首筋に顔を近づけると、先ほどが止まっていたところを舌で舐めた。


「……っ!?」


「はい、おしまい」


 今、僕は何をされたんだ?


「な、なあ、夏樹なつき。今のって……」


「え? つぶした時にが吸った血がお兄ちゃんの首筋に付いてたから舐めとっただけだよ?」


 な、なんだ、そういうことだったのか……。


「あっ、もしかして、ちょっと期待しちゃった?」


「そ、そそそ、そんなことあるわけないだろ! え、えっと、じゃあ、行ってきます!」


 彼はそう言うと、妹の部屋から退室した。


「はーい、バイト頑張ってねー」


 夏樹なつきはそう言うと、指で舌先に触れながら微笑ほほえみを浮かべた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ