隙間女は私の……
まあ、それはそれとして。
「えーっと、先に依頼の話をしようか。ほら、そっちはいつでも返事できるからさ」
「そう、ですね。分かりました。えー、あれは雲一つない晴天の日のことでした……」
三十分後、ようやく彼女の話が終わった。彼女の話を要約すると原因は彼女の家にいる『隙間女』で彼氏は彼女に一目惚れをしてしまい、自分より彼女を溺愛しているらしい。
「なるほどね。で? 君はどうしたいの?」
「待ってください。私が隙間女を怖がっていない理由を知りたくないんですか?」
「知りたくないわけじゃないけど、依頼人が話したくないことを僕は知りたいとは思わないよ」
「そ、そうですか。まあ、会えば嫌でも分かりますからこの場で言っておきます。隙間女は私の……実の姉なんです」
「ふーん、そうなんだ。それで?」
「姉は一ヶ月前に交通事故で亡くなりました。しかし、事故があった日の夜、姉は私の部屋の本棚の裏に現れました。そして自分の死の真相を話してくれました」
「誰かに殺されたんだね」
「……どうして分かったんですか?」
「よくある話だよ。表向きは交通事故だけど実は誰かに殺されていた。で、犯人はすぐそばにいる。そう例えば……君とかね」
「……!! ち、違います! 私は……!!」
「分かってるよ。君のお姉さんは君を守るためにあえて何も言わなかったんだろう?」
「あなたは本当にすごい人ですね。そこまでお見通しとは。しかし、姉は犯人が誰なのか話してくれません。なぜでしょうか?」
「それは君がよく知っている人物だからだよ。あー、あと犯人は僕がここに来る少し前に捕まったよ」
「本当ですか! それで犯人はいったい誰なんですか!!」
「それは家に帰ったら嫌でも分かるよ。まあ、いくらお金が必要でも誰かを殺すのは良くないよね。それで? 彼氏の方はどうするの?」
「え? あー、えーっと、多分もうそろそろ限界だと思うのでどうでもいいです。というか、彼氏が妖怪フェチだったことを知らなかった時点で私は彼女失格です」
隙間女の目を見過ぎると彼女がいる隙間に吸い込まれて死んでしまうからなー。というか、妖怪フェチってなかなかマニアックだな。
「そんなに気にすることないよ。君は君が思っている以上に魅力的だよ」
「そ、そうですか?」
「ああ」
「じゃあ、私と結婚してください!!」
「それはちょっと無理かなー」
「どうしてですか!!」
「……どうして君のお姉さんは妖怪になってまで君のいる現世にいようと決心したんだろうねー」
「質問の答えになっていません!!」
「そうかな? それが分かればなんとなく分かると思うんだけど」
「私は昔から暗記は得意ですがパズルや謎解きは苦手なんです! なので今すぐ答えを教えてください!!」
「分かった。じゃあ、今すぐ家に帰って君のお姉さんに『ねえ、お姉ちゃん。私のこと死んだ今でも好き?』って言ってみて。そうすれば君が知りたいことは全部分かるよ」
「分かりました! あっ、報酬は何がいいですか?」
「え? いいよ、別に」
「ダメです! あなたは私の神様なのですからきちんと受け取ってください!!」
「そうかー。うーん、そうだなー。じゃあ、明日の昼休み、屋上で今日このあと家に帰ってから起こった出来事を話してもらえるかな?」
「分かりました! では、失礼します!!」
「ああ」
さてと、一応彼女に護衛をつけておくか。
「ランラン、リンリン」
『なんだ?』
「彼女が家に帰るまで彼女のこと頼んでいいか?」
『もちろんだ!!』
「じゃあ、頼んだぞ」
『ああ!!』
二人はそう言うと勢いよく部室から出ていった。世界最強のキョンシーは頼りになるなー。
「雅人さん、先ほど今回の事件の犯人に色々と提供していた組織の名前や規模が判明しました」
「そうか。じゃあ、今からその組織に乗り込もう。話し合いができるといいなー」
「そうですね……」
僕は座敷童子の童子と共に一瞬でその場からいなくなった。早く明日にならないかなー。




