そんなことはない!
少女の武装の修理は座敷童子の童子たちにお願いした。専門知識がない人が触ると今よりひどいことになるかもしれないからだ。体の方は自己修復機能が頑張っているため、僕ができるのはそばで見守ることくらいだ。
「……こ……ここは……」
「おっ、起きたか。でも、まだ寝てた方がいいぞ。君、少し前までボロボロだったんだから」
「お、お前は……!!」
彼女はどこからともなく現れたハンドガンを持つと僕にその銃口を向けた。
「……どうした? 撃たないのか?」
「撃たないんじゃない。撃てないんだ。自己修復中だから」
彼女がそう言うとハンドガンは光の粒となって消えてしまった。
「そうか。分かった。それにしてもよくそんな服着れるな」
「バカにするな! これは改良に改良を重ねてようやく完成した私だけの戦闘服だ!!」
「そうか。でも、体のラインがすごく目立ってるぞ。それに耐久性もあんまりなさそうだ」
「何が言いたい?」
「え? いや、なんというか実は君の他にもたくさんいるんじゃないかなーと思って」
「そんなことはない! マスターは私を特別な存在だと言ってくれた! だから、私以外の存在など必要な……うっ!!」
「あんまり興奮すると傷口が開くぞ。というか、なんであんな軽装備で来たんだ? 君のマスターは僕のこと知らないのか?」
「私たちの組織にはお金がない。だから、必要最低限の武装しか作れない」
「ふーん、そうなんだ。大変なんだなー」
「だが! お前を殺せば大量の資金が手に入る! だから、私は今ここでお前を殺す!!」
彼女の爪がいつのまにかナイフになっている。便利な能力だなー。僕はそんなことを考えながら彼女の手首を掴んだ。
「甘い!!」
あっ、これは伸びるな。僕の予想は見事的中した。それは僕の額から自室の壁に当たるまでスッと伸びた。それが壁に当たった音がしたから間違いない。
「はぁ……はぁ……はぁ……や、やった」
「うん、まあ、人間だったらこれで終わってるんだけど、僕はもう人間じゃないからこの程度じゃ死なないんだよ。ごめんね」
「ば、化け物め!!」
「化け物ね……。まあ、そう言われても仕方ないよね。えっと、そろそろこれ抜いてもらえないかな? 動きづらいから」
「う、うわああああああああああああああああああああ!!」
彼女は僕の額に刺さっているナイフを消滅させるとショットガンで僕の顔を蜂の巣にした。そのあと、僕の胸や肩、腹部、下半身にも同じことをした。彼女は僕の体を人体用シュレッダー(?)で切り刻むとその状態の僕を火山の火口まで転送した。
「や、やった……。これでマスターの世界征服の夢が潰えずに済む」
「それはどうかな?」
「お前……ど、どうしてここにいる!! お前はたしかに死んだはずだ!!」
「えーっと、僕が絶命するところを君はそのかわいい目でちゃんと見たのかな?」
「そ、それは……」
「なーんてね。部屋の修理は僕がするから君は迎えが来るまでゆっくりしてていいよ」
「な、なぜだ……。なぜお前は死なない……」
「そんなの僕が一番知りたいよ。さあて、修理修理」
マスター、私は本当に特別な存在なのでしょうか? それともただの駒でしかないのでしょうか。




