うん、まあ、原因は私なんだけどね
いやあ、一時はどうなるかと思ったけどなんとかなって良かったなー。さてと、寝るか。僕が自室のベッドで寝ようとすると机の上の端末が鳴り始めた。
「誰だよ、こんな時間に。はい、もしもし」
「あっ! 雅人! ごめん、寝てた?」
なんだ、羅々か。いくら幼馴染でもこんな夜中に電話するなんてマナーがなってないな。まあ、何かあったから僕に連絡したんだろうが。
「いや、そろそろ寝ようとしていたところだ」
「そっかー。じゃあ、ちょっとうち来てよ」
「えー」
「そんなに嫌がらないでよ。というか、これ雅人絡みの事件だよ」
「僕絡み?」
「うん、まあ、原因は私なんだけどね」
「よし、分かった。すぐ行く、今行く、デコピンしに行く」
「今デコピンされるときついなー。私の目、フル稼働してるから」
フル稼働? 百々目鬼の象徴である無数の目を?
「そうか。分かった。今すぐそっちに向かう」
「なる早で頼むよー」
「ああ」
「お兄ちゃん、どこ行くの?」
分かってるのに訊くのか……。
「夏樹か。さぁな。とにかく、お前はもう寝ろ」
「あの女のところに行くの?」
「だったらどうする?」
「罠だったらどうするの?」
「その時はその時だ」
「そっか。いってらっしゃい」
「止めないのか?」
「止めないよ。お兄ちゃんがそうしたいのなら、ね」
「そうか。ありがとう、夏樹。じゃあ、いってくる」
「うん、いってらっしゃい。必ず帰ってきてね」
「ああ」
僕は夏樹(僕の実の妹)が抱きかかえている僕の髪の毛入りのクマのぬいぐるみを横目で見ながら、自室から出た。あいつ、いったい何やらかしたんだろう……。まあ、いいや。とりあえずあいつの家に向かおう。




