意外と優しい
休日……昼……帰り道……。
「あっ、先生だ! せんせー!」
「あっ、ギンちゃんだ」
「ギンちゃん? 誰?」
「え? あー、えーっと、ほら、世界中に神経毒をばら撒いたイソギンチャク娘だよ」
「あー、あの娘か」
夏樹(僕の実の妹)はそう言うとこちらに向かってくる彼女のじーっと見つめ始めた。
「先生! こんにちは! あれ? この娘、誰?」
「え? あー、えーっと、僕の妹の夏樹だよ」
「へえ、先生妹いたんだー」
「何よ」
「ううん、何でもないよー。ただ、見た目と精神年齢が一致してないなーと思って」
「それは……ほら、あれよ。私はこの姿が気に入ってるから」
「嘘つかなくていいよ。いつまでも先生の妹でいたいから、大人の姿を見られたら幻滅されると思ってるからそんな幼児体型なんでしょ?」
「お前……!!」
「あれ? もしかして図星?」
「二人ともそのへんにしておけ。で? ギンちゃんはこんなところで何してるんだ?」
「うーんとねー、忘れちゃった! あっ、そうだ! ねえねえ、先生の家ってこの近くにあるのー?」
「え? あー、まあ、そうだな」
「そっかー。じゃあ、今から遊びに行ってもいい?」
「え? あー、まあ、僕は別にいいけど」
「夏樹ちゃんは?」
「お兄ちゃんに何もしないのなら別にいいわよ」
「やったー! ありがとう! 夏樹ちゃん! 夏樹ちゃんは意外と優しいんだねー!」
「……一言余計なのよ」
「なんか言ったー?」
「いや、別に」
「じゃあ、先生の家まで競争しよう! よーい、ドン!!」
「ちょ! 道路で走ると転んだ時、結構痛いぞー」
「大丈夫ー! 私、自分の毒で痛いのなくせるからー!」
うわあ、幼いけどやっぱりあの娘も妖怪なんだなー。




