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遊び相手

 妹にオムライスを作ってあげると、とてもおいしそうに十人前をペロリと食べてしまった。

 顔についている口からはあまり食べないが、後頭部にある口からはよく食べるのが二口女ふたくちおんなの特徴。

 まあ、お腹にブラックホールがあるウ○ラーや食べたものを全てエネルギーに変えてしまうア○ジキングにはおとるが。

 さてと、今日もバイトに行くとしよう。

 僕が二階の自室でバイトに行く準備をしていると妹が足音一つ立てずに僕の背後までやってきた。


「……お兄ちゃん」


 妹はそう言いながら、僕に抱きついた。

 後ろから抱きつかれるのはあまり好きではないが、妹は例外だ。

 なぜならば、僕の鬼の力を知っている存在の中で一番僕に優しくしてくれるからだ。だがしかし。


「なあ、夏樹なつき。もうそろそろバイトに行かないといけないから、そういうのは僕が帰ってきてからにしてくれないか?」


 妹は無言で僕をギュッと抱きしめる。

 まるでこの家から出させまいとしているかのように。


「まいったな……」


 僕がそうつぶやくと、妹は長い黒髪でグルグル巻きにした。


「えっ? ちょ、夏樹なつき。これはいったい」


「……行かないで……ずっとここにいて……」


 寂しいのは分かる。

 しかし、物事には優先順位というものがある。

 だから、それを無視して私情を挟むことは……。


「……お兄ちゃん……私のこと……嫌い?」


「嫌いじゃない。世界中の誰よりも夏樹なつきのことが好きだ」


 あれ? 今、僕とんでもないことを口にしたような。


「……私もだよ……お兄ちゃん……」


 妹は僕の背中に乗ると、首筋に優しく噛みついた。


「お、おい、夏樹なつき。今のはいったい」


「……お兄ちゃんは……私のもの……」


 ん? それって、つまり『マーキング』をしたということか?


「そ、そうか。けど、僕は夏樹なつき以外の女の子を好きになんてならないから、わざわざマーキングしなくても大丈夫だぞ?」


「……念のため……だよ」


 なるほど。念のためか。

 夏樹なつきは心配性だな。


「そっか。え、えーっと、そろそろ離し……」


 僕が最後まで言い終わる前に妹は僕のほほにキスをした。

 その直後、妹は僕から離れた。

 僕がキスをされたところをさわりながら妹の方を向くと、妹はニコニコ笑っていた。


「……お兄ちゃん……顔、真っ赤だよ」


「なっ! そりゃいきなりあんなことされたら、びっくりするに決まってるじゃないか!」


 妹はスキップをしながら、退室した。

 僕は「待てー!」と言いながら、妹のあとを追った。

 そんな感じで僕はバイトの時間まで妹の遊び相手になった。

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