レイはどうした?
……なんだ? ここは……。僕の住んでいる町か? でも、なんか燃えてるな。人も妖怪も家も木々も何もかも燃えてる。いったい何が……。ん? あれはなんだ? 黒いタコか? いや、違う。あれは……。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「……え? あー、夏樹か。あれ? 今何時だ?」
「夜の八時くらいだよ」
「そうか」
「それより体の調子はどう?」
「え? あー、うん、もうなんともないよ」
「そっか。良かった。じゃあ、凛ちゃんと姫凛ちゃん、二階まで運ぶね」
「ああ、頼む」
夏樹(僕の実の妹)は自分の黒い長髪で僕のそばで寝息を立てている二人を拘束するとそのままゆっくり持ち上げた。相変わらずすごい力だ。
「なあ、夏樹」
「なあに?」
「……お前はこの町好きか?」
「うーん、そうだなー。お兄ちゃんがいる場所ならどこでも好きになれると思うよ」
「そうか」
夢に出てきた黒いタコのようなものは白目の夏樹だった。もしかしてあれは夏樹の未来の姿なのか?
「そう言うお兄ちゃんはどうなの?」
「え? うーん、そうだなー。夏樹がいればどこでも好きになれるよ」
「そっかー。私とおんなじだね」
「そうだな。あっ、そうだ。レイはどうした?」
「お兄ちゃんのベッドに染みついたお兄ちゃんのにおいを嗅ぎながら寝てるよ」
「そ、そうか……」
マジか……夏樹がもう一人増えたみたいだ。
『おい! 雅人!! いつになったら風呂に入るんだ!!』
「ランラン、リンリンいたのか」
『私たちはお前の護衛だからな! ずっとお前のそばにいるぞ!!』
「そうか。よし、じゃあ、入るか」
「お兄ちゃん」
「分かってるよ。ちゃんと童子に例の件伝えてあるから」
えーっと、たしか二人の心拍数とか発汗量を計測するんだったな。まあ、計測するのは童子だが。
『ん? 何の話だ?』
「何でもない。ただの独り言だ」
『そうか! では、共に行こう!!』
「ああ」




