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敗北するな

 僕の部屋のベッドで寝ているレイ(天使型金属生命体)は気持ちよさそうに眠っている。おそらく力を使ったから疲れたのだろう。僕がレイの頭をそっと撫でるとレイは僕の手を握った。


「レイ、お前は多分……いや、確実に僕より強い。でも、困ったことが相談してくれ。僕はお前の保護者だから」


「……? ……!」


 あっ、起きた。


「おはよう。レイ」


「……♪」


 レイは僕の腕に抱きつくと頬をスリスリと僕の腕にこすりつけた。


「レイは甘えん坊さんだなー。あっ、そうだ。レイ、お前が僕に言ってたカタカナ七文字の意味、分かったよ。『ラブ』だったんだな」


「……!!」


 レイはそれを聞くとうんうんと頷いた。


「そっか。良かった。まあ、アレだな。意味は同じでも読み方分からないやつってあるよな。あっ、そういえば、お前が黒い天使に使ってた言葉ってお前だけが使えるのか?」


「……?」


 レイだけ知らないのか……それとも、みんな知らないのか。あるいは知られるとまずいのか……。まあ、いずれにせよ、僕は知らなくていい情報だな。


「いや、いい。今のは忘れてくれ。えっと、今晩コロッケとエビフライ作るんだけど、苦手な食べ物ってあるか?」


「……」


 レイは首を横に振った。そうか。苦手な食べ物ないのか。すごいな。


「そうか。分かった。じゃあ、そろそろ作り始めるからそれまで寝てていいぞ」


「……!?」


 レイは僕の腕をギュッと抱きしめる。どうやら僕と離れたくないようだ。


「えっと、じゃあ、一緒に作るか?」


 レイは僕の腕を離そうとしない。食べる専門なのか、僕と一緒にいたいだけなのか……。まあ、どちらにせよ、しばらくここから動けないのは変わりないな。


「おーい、童子わらこー。いるかー?」


「はい、ここに」


 いつものようにどこからともなく現れる座敷童子の童子わらこ。やっぱり童子わらこが近くにいると安心するなー。


「えっと、僕しばらくここから動けないから今日はみんなで夕飯作ってくれ」


「分かりました。ところでレイさん。あなたは雅人まさとさんを愛していますか?」


「え? いや、今日会ったばかりだぞ? そんなこといきなりかれたら困るだろ。なあ? レイ」


 レイは僕の両頬に手を添えると僕の頬にキスをした。その直後、今まで少し開いていた僕の部屋の扉が勢いよく開かれた。


「えっ!? ちょ! いきなり何す……」


「ねえ、レイちゃん。今の何?」


「な、夏樹なつき!? いつからそこに!!」


「今さっきだよ。それより、今の何? 私の前でお兄ちゃんにキスするとか私にケンカ売ってんの? なあ、おい、聞いてるのか? なんとか言えよ」


 夏樹なつき(僕の実の妹)はレイを睨みつけている。うわあ、血眼になってる……。今にもキレそうだ。色々と。


「……私は雅人まさとのことが好き。だから、キスでその気持ちを雅人まさとに伝えた」


「あっ、そう……」


「レイ! お前しゃべれるようになったのか!?」


「うん。さっき雅人まさとにキスした時、雅人まさとがよく使ってる言語をマスターしたから」


 あー、あの時かー。そういえば、うちの高校にやってきた天使型金属生命体たちの隊長みたいなやつも似たようなことしてたな。


「そうか。じゃあ、これからたくさんお話しできるな!」


「うん!!」


「おい、話はまだ終わってないぞ。こっち向け」


夏樹なつきはどうして怒ってるの? カルシウムが不足してるの?」


「あんたさ、自分の好きな人が目の前で他のメスにキスされてたらどう思う?」


「嫌な気持ちになる。そいつを消したくなる」


 ええ……。レイ、お前、夏樹なつきと同類だったのか。あー、いや、まあ、少なからず嫌な気持ちにはなるよな。でも、消したくなるって……。


「だよなー。じゃあ、なんであんなことしたんだ?」


「私の理性が本能に敗北したからだ」


「敗北するな。お兄ちゃんの理性みたいになれ」


「ん? 雅人まさとの理性はすごいのか?」


「ああ、すごいぞー。結構かわいい私が十数年誘惑しても襲わないくらいすごいぞー」


「それはすごい! でも、それは逆に本能が弱すぎるのではないか?」


「そんなことはない。ねえ? お兄ちゃん」


「え? あー、まあ、性欲がないわけじゃないから迫られたら多少緊張するよ」


「だってさ。だからよー……あんまり調子に乗るな」


「そうか。夏樹なつき雅人まさとのことが大好きなんだな!!」


「ああ、好きだ。この世のどのオスよりも」


「なるほど。だけど、私も雅人まさとのことが好きだ。だって雅人まさとは仲間たち以外どんなものでも切り裂ける剣を向けられても私に殺意を抱かなかったから」


 え? あの剣、そんな恐ろしいものだったのか?


「そうか。なるほど。どうやらその気持ちは本当のようだな。だが、次はないぞ」


「分かった」


「よろしい」


 あっ、そうだ。


「お兄ちゃん」


「な、なんだ?」


「はい、これ。ポストにお兄ちゃん宛ての手紙入ってたよ。あっ、でも、深夜に読んでほしいみたいだからそれまで読んじゃダメだよ♡」


「お、おう、分かった。ちなみに誰からだ?」


「泥棒猫からだよ」


 泥棒猫……あー、あいつか。


「分かった。えっと、じゃあ、僕はそろそろ」


雅人まさとー、夕飯ができるまで私と一緒にいてー」


「え? いや、でも」


雅人まさとさん、夕飯は私たちで作りますからレイさんの相手をしていてください」


「そ、そうか。分かった。じゃあ、頼んだぞ」


「はい、分かりました」


 やれやれ、しゃべれるようになってもレイはレイだなー。

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