世界最強のキョンシー
昼休み、僕の机の上に紙飛行機が着陸した。誰かのいたずらかな? 僕はそんなことを考えながらそれを変形させ、一枚の紙にした。そこにはこの手紙を読んだ後、一人で校庭に来なければこの町を破壊すると書いてあった。字はきれいなのに書いてあることは物騒だ。僕はその紙をズボンのポケットに入れるとその手紙の指示に従うことにした。
「んー? なんかいるなー」
校庭のど真ん中にはチャイナドレスを着た女の子が二人いる。この学校にあんなのいたかな? 僕はそんなことを考えながら二人の元へと向かった。
「こんにちは。手紙を読んでここまで来たんだけど、僕に何か用かな?」
二人はお互いの顔を見合わせるとニッコリ笑った。その直後、二人は僕の首に蹴りを入れた。僕は二人の足が僕の首に当たる前に両腕でそれを受け止めた後、二人の足を払いのけた。今の蹴り、ロードローラーくらい重かったな。
「えーっと、僕、君たちに何かしたかな?」
『特に何もされていない!』
「じゃあ、なんで僕に攻撃したんだ?」
『それはお前がこの町で一番強いという噂を聞いたからだ!』
この町で一番強いのは僕の妹なんだよなー。
「そうか。というか、二人とも人間じゃないな。もしかしてキョンシーか?」
『ああ、そうだ!』
「私の名前はランラン!」
「私の名前はリンリン!」
『世界最強のキョンシーだ!!』
世界最強か。まあ、日光浴びてるのにピンピンしてるからそこそこ強いんだろうな。
「そっか。えっと、どっちがどっちだ?」
「右利きがランランだ!」
「左利きがリンリンだ!」
「そうか。でも、それだけじゃ見分けつかないぞ」
『そうなのか?』
「ああ、そうだ。ほら、見た目が同じでも性格とか容姿とか好きな食べ物とか微妙に違うだろ?」
「ランランはラーメンが好きだ!!」
「リンリンはリンゴが好きだ!!」
『性格はどちらも大雑把だ! あと容姿で見分けるのは非常に困難だ!』
「そうか。うん、まあ、だいたい分かった。それで? 君たちは僕を倒したら他の町に行くのか?」
『ああ、そうだ!』
「そっか。じゃあ……そろそろ再開しようか」
『承知!』
二人はその場でジャンプすると空中で静止した。へえ、飛べるのかー。
『くらえー! 必殺! 天雷拳!!』
「へえ、雷使えるのかー。それじゃあ、こっちも使わせてもらおうかな。雷波、力を貸してくれ」
「いいよー」
僕は僕の体内にいる雷獣の雷波の力を使って二人の技を相殺することにした。
「雷獣拳!!」
『な、何っ!? う、うわあああああああああああああ!!』
ん? 手応えがあんまりないな。僕が相殺する前に少し上に飛んだな。
『なーんてな! これでもくらえ! 天雷螺旋蹴り!!』
「回ればなんとかなるとは限らないんだよな……。よし、ちょっと試しにやってみるか」
僕は雷獣のエネルギーを心臓に集中させた後、それをランランとリンリンめがけて一気に解き放った。
「『雷獣咆哮砲』!!」
『そ、そんなのありー!?』
二人はそう言いながら遠くに飛んでいってしまった。
「うーん、もう少し出力調整した方が良かったかなー。うーん、まあ、いいか」
『まーさーとー!!』
「あっ、戻ってきた」
『まだだ! まだ私たちは負けてない!!』
「お、おう」
『私たちはお前に勝つまで他の町に行けない! だから、早く私たちに敗北しろ!!』
「嫌だと言ったら?」
『全力でねじ伏せる!!』
「あー、はいはい」
『行くぞ! 雅人! はぁああああああああ!!』




