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龍神

 僕が体を洗っていると湯船に浸かっている鬼姫ききに話しかけられた。


「ねえ、雅人まさとー」


「んー? なんだー?」


「体、洗ってあげよっか?」


「いや、いいよ。自分で洗えるから」


「えー、別にいいじゃん」


「よくない」


「えー、なんでー?」


「ダメったらダメだ」


「あっ、そう。じゃあ……動くな」


 なっ……! くそ! 鬼姫ききのやつ、こんな時に言霊の力を!!


「さあて、どこから洗おうかなー……って、あんた通常時でこれなの? あっ、口だけ動かしていいわよ」


「あ、ああ、そうだ。悪いか?」


「いや、別に悪くはないけど、なんか別の生き物みたいね」


「あんまりジロジロ見るな」


「何? もしかして恥ずかしいの?」


「そうじゃない。けど」


「けど?」


「誰かに見せつけるようなものじゃないからあまり見せたくないんだ」


「ふーん。ねえ、ちょっと触ってもいい?」


「だ、ダメだ! やめてくれ!!」


「そんなにあたしに触られるのが嫌なの?」


「嫌というか、ダメなんだ」


「ダメ? なんでダメなの?」


「分からない。けど、なんとなくそんな気がするんだ」


「ふーん、じゃあ、試しに触ってみようーっと」


「なんでそうなる! 僕の話聞いてたか!!」


「今ので納得すると思う? ということで、触りまーす!」


「や、やめろ! 頼むから触らないでくれー!!」


 鬼姫ききの指が僕のものに触れようとした時、いつ見ても美しい黒い長髪が彼女の両手の指の骨を全て折った。


「……っ!! 治れ。あー、びっくりしたー。夏樹なつきちゃん、いきなり何するのー?」


「うるさい、黙れ。お兄ちゃん、大丈夫?」


「……気安く話しかけるな、小娘」


「え? ちょ、あんた実の妹に何言って……」


 な、何、これ……。なんで雅人まさとの体に龍のうろこが。


「龍神のくせに礼儀知らずなんだね」


「え? 龍神!? こいつ、龍神なの!?」


「うん、そうだよ。まあ、ただ加護を与えてるだけなんだけどね。あっ、このこと、お兄ちゃんは知らないから死んでも言わないでね」


「わ、分かったわ」


 怖い怖い! 目が怖いわよ! 夏樹なつきちゃん!!


「で? なんで許可なく出てきたの?」


鬼姫こやつわれの象徴を触られそうだったからだ」


「そうなる前に私が阻止したじゃない。勝手に出てこないでよ」


「小娘が……殺されたいのか?」


「は? もしかしてその小娘にフォローされたことに気づいてないの? 龍神って思ったより頭悪いんだね」


「小娘……今、われを愚弄したな?」


「だったら何?」


「……殺す」


「沸点低すぎ。あなた、本当に龍神なの?」


「黙れ! 小娘!! 『龍神の鋭爪』!!」


「『蜂の巣』」


「……っ!! おい、小娘……。今のはなんだ? 何も見えなかったぞ?」


「それはあなたが私より弱いからよ。ということで……その時までおとなしくしてなさい」


「……」


「返事は?」


「……分かった」


「よし、じゃあ、早くお兄ちゃんの無意識まで潜って」


「わ、分かった」


「……あれ? どうして夏樹なつきがここにいるんだ?」


「水を飲みに来ただけだよ。それより体、大丈夫? なんともない?」


「え? ああ、大丈夫だ」


「そう。良かった。あっ、そうだ。ねえ、鬼姫ききお姉ちゃん」


「は、はい!!」


「あとで少しお話ししようか」


「……おー、怖い怖い」


「なんか言った?」


「いえ! 何も!!」


「そう。じゃあ、私リビングで待ってるから。じゃ」


 夏樹なつき(僕の実の妹)はそう言うと浴室から出ていった。えーっと、何かあったのかな?


「なあ、鬼姫きき


「な、何?」


「何かあったのか?」


「な、何もないわよー」


「そうか。なら、いいんだが。あっ、それと背中だけなら洗っていいぞ」


「え? いいの?」


「ああ。でも、前はするなよ」


「わ、分かった! じゃあ、しばらくおとなしくしててね」


「お、おう、分かった」

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