殺したいくらい大好きよ♡
僕が浴室に入ると鬼姫がやってきた。
「ねえねえ、雅人ー。あたしも一緒に入っていい?」
「え? あー、まあ、別にいいけど」
「やったー! よし、服脱ごうっと」
「待て」
「え? 何?」
「いや、その……お前に羞恥心はないのか?」
「は? あんたみたいなガキに裸見られたってなんとも思わないわよ」
「いや、でも……」
「あんた、もしかしてあたしの裸に興味があるの? それとも自分の裸をあたしに見られたくないの?」
「うーん、まあ、後者だな」
「いや、そこは両方って言いなさいよ。というか、あんたの裸なんて見飽きてるのよ。だから、あんたも慣れなさい」
「無茶言うな。僕の知人はほとんど女の子なんだぞ? しかも、ほとんどが無防備で年中発情してて隙あらば僕を誘惑してくる」
「それはあんたの『王の力』のせいよ」
「え? この力、呪いじゃないのか? というか、名前あったのか」
「ないわよ。あたしが今ぱっと思いついた名前よ。それより服脱いでいい? 汗が肌に染みついて気持ち悪いから」
「……今日だけだぞ」
「はいはい」
鬼姫は服を脱ぐと体を洗い始めた。
「あー、さっきの話の続きだけど。あんたのその力は日に日にレベルアップするわよ」
「え? そうなのか? じゃあ、今は……」
「あー、それとレベルは一日に一以上上がるわよ」
「ん? じゃあ、僕のレベルが今どのくらいなのか分からないじゃないか」
「そうね。けど、いくらレベルが上がっても、あんたを知らないやつには効かないから大丈夫よ」
「えっと、今のフラグじゃないよな?」
「フラグ? あー、うーん、まあ、その時はその時よ」
「いや、フラグだったら僕が一番困るんだが」
「いいじゃない。世界中の異性があんたを好きになってくれるんだから」
「僕はそんなの望んでない」
「いざとなったらあんたの血を飲ませればいいじゃない」
「それはできればやりたくない。というか、お前はどうなんだ? お前は僕の力の影響を受けているのか?」
「うーん、受けてないとも言えるし受けてるとも言えるわね」
「どういう意味だ?」
「ほら、あたしっていろんなものに耐性があったり無効化しちゃうでしょ? だから、あんたの力の影響はほとんど受けてないと思うわ。でも、毎日あんたの顔を見てるから自然と好きになってると思うのよねー」
「うーんと、結局お前は僕のこと好きなのか? 嫌いなのか?」
「殺したいくらい大好きよ♡」
「ええ……。でも、なんかお前らしいな」
「そう? まあ、そんなことより背中洗ってくれない?」
「肩外せばいけるだろ」
「雅人ー、こういう時は嫌な顔ひとつせずに『はい! 喜んで!!』って言うものよ」
「そ、そうなのか?」
「知らないわ。でも、なんかの雑誌にそう書かれてたわよ」
「そうなのか。それで? どのへんを洗えばいいんだ?」
「決まってるでしょ。あたしの目じゃほとんど見えないところ全部よ」
「そうか。分かった」
「んー?」
「え? あー、えーっと……はい! 喜んで!!」
「よろしい!」




