やめてくれないか?
家に帰ると妹が頬を膨らせた状態で僕を待ち構えていた。
「遅いよ! お兄ちゃん! 寄り道してたの? それとも……」
「まあ、そう怒らないでくれよ。ほら、抱きしめてやるから」
僕は妹に近づくと、ギュッと抱きしめた。
妹は抵抗しようとしたが、僕から目を逸らしながら僕の背中に手を回した。
「遅くなるなら、せめて連絡ぐらいしてよ。私、心配性なんだから」
「うん、次からはそうするよ。えっと、その……少し話があるんだけど……」
妹は僕の顔を見ながら、小首を傾げる。
「話?」
「ああ、そうだ。僕たちのこれからについて、少し話しておきたくてな」
妹は僕から離れると、僕の顔を凝視した。
「な、なんだよ」
「ううん、別になんでもないよ。えっと、とりあえず手洗いとうがいしてからリビングに来て」
僕の部屋でしないのか?
まあ、別にいいけど。
「分かった」
*
「お待たせ」
「三分待った」
それは待ったうちに入るのか?
「ごめん、ごめん。えっと、それじゃあ、さっそく本題に入ろうか」
「うん、いいよ。それで? 話って何?」
なんかいつもと雰囲気が違うような気がするな。
気のせいかな?
「えっと、その……僕たちってさ、実の兄妹だろ?」
「まあ、そうだね」
なんか怒ってないか?
「だから、その……あんまりベタベタしてるとお互い困る時が来ると思うんだよ」
「そうかな?」
はい、そうです。
「だからさ……僕のことを兄じゃなくて、恋人だと思っているのなら、それは今日限りでやめてくれないか?」