とりあえず挨拶がわりに一発殴っていい?
夜、僕たちは『背取り魔』に所属している連中を伸しに行った。正確な人数は分からないが、この町にうじゃうじゃいることは分かっている。
「まーさーとっ! 体かーしてっ!!」
鬼姫は僕の家の近くにある公園付近でそう言った。
「今はまだダメだ」
「えー! なんでー!?」
「まだ幹部と接触してないからだ」
「幹部? それって何人いるの?」
「分からない。けど、幹部がいるということは分かってる」
「それって、もしかしてあのちんちくりんの情報?」
「ああ、そうだ。お前が苦手な座敷童子の童子の情報だ」
「苦手というか、昔あいつのお母さんを傷つけちゃったから、ちょっと話しづらいのよ」
「そうか」
ん? なんだ? なんか夜なのに夜じゃないような気がする。僕はそんなことを考えながら空を見上げる。
「あれ? なんか空青くないか?」
「雅人、あんた目大丈夫? 今は夜よ、空が青いわけないじゃない……って、あー、これはたしかに青いわね」
「不思議だなー。よし、とりあえずこのことをみんなに連絡しておこう」
僕はズボンのポケットから端末を取り出す。ん? なんで圏外なんだ? 端末の画面にはたしかに圏外という文字が書かれている。おかしいな、家を出る前はそんなことなかったのに。
「ねえ、雅人。あんた、なんか地味に縮んでない?」
「え? あー、ホントだ。さっきより目線が低い。この青空のせいかな? まあ、いいや。鬼姫、僕の体の中に入ってくれ」
「え? いいの?」
「頼む! お前の力が必要なんだ!!」
「うーん、まあ、たしかにその体じゃ戦いにくいわよね。よし、じゃあ、ちょっと借りるわよ。準備はいい?」
「ああ! いつでも来い!!」
「よし、じゃあ、行くわよー! それー!!」
「……っ!!」
あー、懐かしいなー、この感じ。でも、なんだろう、この感じ。すごく安定してる。
「あれ? ねえ、あんたの体、元の大きさに戻ってるわよ」
「え? そうなのか?」
「ええ。あっ! 分かった! きっとあたしの万物耐性のおかげよ!!」
「万物耐性? あー、なんか鬼にはそんなのあるんだったな」
「そうそう。まあ、あたしの場合、ほとんど無効化できるんだけどねー」
「そうか。ん? 誰かこっちに来るぞ」
「んー? あー、あれ多分、幹部よ」
「幹部? あれが? というか、なんで分かるんだ?」
「うーん、女の勘かしらねー」
「お、おう」
「まあ、それはともかく、とりあえず挨拶がわりに一発殴っていい?」
「いいけど、死なない程度にしろよ」
「分かってるって! それじゃあ、久しぶりに暴れますかー!」




