乳取り魔
最近、乳取り魔という妖怪が女性の胸部の皮下脂肪を売買しているらしい。うーん、いったいどんな妖怪なんだろう。
「なあ、童子。今日、時間あるか?」
「はい、あります」
「即答か……。あのなー、なんか用事があったら、そっち優先していいんだぞ?」
「ありません」
「ほんとか?」
「はい、ありません」
「そうか。じゃあ、今夜『乳取り魔』を捕まえに行くからそれまでに色々準備しておいてくれ」
「分かりました。……雅人さん」
「ん? なんだ?」
「いえ、なんでもありません」
「童子、言いたいことがあるなら遠慮なく言ってくれ。僕たちは家族なんだから」
「……そうですね。では、言います。雅人さんは胸派ですか? 尻派ですか?」
数秒間、沈黙がリビングを包み込む。えーっと、こいつ、今なんて言った?
「あー、えーっと、それって今言わなきゃダメか?」
「ダメです」
「どうしても?」
「どうしてもです」
「そうか。うーん、こだわりはないなー。でも」
「でも?」
「僕をちゃんと見てくれる娘は好きだな」
「……! 分かりました。では、私はこれで」
「おう」
僕がそう言うと彼女は一瞬でその場からいなくなった。もしかして今の質問『乳取り魔』と何か関係があるのかな? うーん、まあ、いいや。




