ああ、先輩……好き♡
僕が僕の家のリビングのソファに座っている後輩に座敷童子の童子が作った『精神が猫になるのを防ぐ薬』を渡す。これでなんとかなればいいのだが。
「あの先輩」
「なんだ?」
「……な、なんでもないです」
「紗良、言える時に言っておかないと絶対後悔するぞ」
「そ、そうですね。じゃあ、言います」
彼女が僕に抱きつく。どうして彼女は目尻に涙を溜めてるんだろう。
「先輩! お願いします! 私を先輩のものにしてください!!」
それを聞いた夏樹(僕の実の妹)が激怒する。
「はぁ……やっぱりあんたも私の敵なのね!!」
「待て、夏樹。今のは多分そういうのじゃない」
「じゃあ、何なの!!」
「なあ、紗良。お前今までに精神まで猫化したことあるか?」
「……あります」
「なんで相談してくれなかったんだ?」
「それは……できるだけ自分で制御しようと思ったからです」
「それだけか?」
「……先輩に迷惑をかけたくなかったからです」
「そうか。でも、よかったな。ちゃんと言えて」
「は、はい。えっと、それで私はこれからどうなるんですか?」
「うーん、そうだなー。童子ー、どうするー?」
僕がそう言うと座敷童子の童子がいきなり僕の目の前に現れた。
「そうですねー。一番いいのはここで一緒に暮らすことですが、さすがにそれはまずいので放課後ここに来てください」
「えっと、休日もですか?」
「もちろんです。あっ、また精神まで猫になりたいのでしたら私は止めませんよ」
「いえ! もうあんなの嫌です!! 私、これから毎日ここに来ます!!」
「そうですか。分かりました」
「なあ、童子」
「何ですか?」
「僕は何をすればいいんだ?」
「紗良さんはあなたに甘えたいという願望が暴走した時、猫化します。つまり、毎日あなたと触れ合っていれば猫化することはほとんどないということです」
「そうか。じゃあ、僕は紗良を愛でればいいんだな」
「はい」
「と、ということは私は毎日、先輩にあんなことやこんなことをしてもらえるんですね!!」
「紗良ちゃん、分かってると思うけどお兄ちゃんに変なことしちゃダメだよー」
「な、夏樹ちゃん、笑顔が怖いよー」
「そんなことないよー。ねえ? お兄ちゃん」
「僕、意地悪する子は嫌いなんだよなー」
「紗良ちゃん、これからも仲良くしようね! ね!」
「え? あ、ああ、うん、分かった」
「あっ! もうこんな時間! お兄ちゃん! 早くしないと遅刻しちゃうよ!!」
「おっ、そうだな。紗良、学校行けそうか?」
「あっ、はい、大丈夫です」
「そうか。でも、無理はするなよ」
「は、はい」
先輩、今日も優しいなー。ああ、先輩……好き♡




