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お兄ちゃんが決めていいよ

 僕たちが家に帰ると寝ているはずの夏樹なつき(僕の実の妹)が玄関にいた。


「ただいま」


「おかえり」


夏樹なつきちゃん! 今からあたしたち」


「お兄ちゃん、早く寝よう」


「ああ、そうだな。ごめんな、鬼姫きき


「待って。ねえ、夏樹なつきちゃん。こいつの全部、あたしがもらってもいい?」


 ……は? こいつ、正気か?


「何言ってるの? そんなのダメに決まってるでしょ」


「え? ダメなの? なんで?」


「そんなの言わなくても分かるでしょ? 私にはお兄ちゃんが必要なの。だから」


「くだらない」


「……は?」


雅人まさとがあんたにとって特別な存在でなおかつ必要不可欠な存在っていうのは知ってるけど、要はこいつを独占したいだけでしょ? たまにはあたしにも貸しなさいよ」


「……ちゃんと返してくれる?」


「うーん、多分無理。あたし、こいつと駆け落ちするつもりだから」


 か、駆け落ち!?


「ちょ、ちょっと待て! お前、僕と駆け落ちするつもりなのか!?」


「ええ、そうよ。悪い?」


「いや、悪いというか、なんでそうしようと思ったのか分からないんだよ」


雅人まさと、あんた本当に鈍感ね」


「え?」


「あたしはやろうと思えば、いつでもこの星を破壊できるのよ? それなのにあたしが未だにそれをしてないのはどうしてだと思う?」


「え? うーん、おいしいものがたくさんあるから?」


「それもあるけど、一番の理由はあんたがいるからよ」


「え? 僕?」


「ええ、そうよ。あたしのせいでどんどん鬼化してたのにあんたはあたしの魂があたしの体に戻るまでちゃんとうつわになってくれたから、あたしはあんたが生きている限り、あんたと一緒に生きていたいって思うようになったのよ」


「そうだったのか。全然知らなかった」


「でしょうねー」


「ねえ、お兄ちゃん。お兄ちゃんはどうしたいの?」


「え?」


「お兄ちゃんが決めていいよ。私とこいつ、どっちと一緒にいたい?」


「うーん、僕はどっちも大好きだから、どっちともずっと一緒にいたいなー」


「お兄ちゃん……」


雅人まさと……」


「ん? なんだ? ダメなのか?」


「ううん、ダメじゃないよ」


「あんたって本当に自分に正直よねー。それじゃあ、おやすみー」


「おう、おやすみ」


「お兄さん、話終わった?」


 いきなり僕の目の前に現れたレイナ(白髪ロングの幼女だが宇宙人である)は僕の顔をじっと見つめている。


「ああ、終わったよ。よし、じゃあ、一緒に寝るか」


「うん!」


夏樹なつき、色々あって今日は三人で寝ることになるんだけどいいかな?」


「うん、いいよ。でも、お兄ちゃんは必然的に真ん中で寝ないといけないよ」


「え? あー、まあ、そうだな」


「大丈夫? 嫌じゃない?」


「いや、別に」


「そっか。じゃあ、早く手洗いとうがいしてきて」


「ああ、分かった。レイナ、お前も一緒に来るか?」


「うん♡」


 あー、眠い。さっさと寝よう。

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