詩
さて、お次は何かな?
「おい、羅々。僕は他に何をすればいいんだ?」
彼が『百々目鬼 羅々』にそう言うと、彼女は自分の近くにいた天狗の『鞍馬 天』に任せた。
「え? あー、えーっと、それは鞍馬くんがなんとかしてくれるよ」
「え? 僕ですか?」
まーた他人に厄介ごとを押し付けてるな。
「そうですねー。じゃあ、詩でも書いてみましょうか」
絵の次は詩かよ。
「詩か……。詩ね……」
「テーマは『妹』です」
だと思った。
「うーん、まあ、それなら書けるかもな」
僕は天がカバンから取り出した自由帳に詩を描き始めた。
高校生にもなって自由帳を持ち歩いているやつなんていたんだな。
まあ、今は詩に集中しよう。
僕が詩を描いている間、他のみんなは課題をしていた。
……よし、できた。
「できたぞー」
「そうですか。では、黙読と音読……どちらがいいですか?」
そんなのどっちでもいいだろ。
まあ、いいや。
「じゃあ、黙読で頼む。誰が聞いてるか分からないからな」
「分かりました」
雅人は天に自由帳を手渡した。
彼はそれを他のみんなに見えるように机の上に置いた。
「……これは……」
「なんだ? 誤字でも見つけたのか?」
彼は首を横に振った。
「先輩、詩人になる気はありませんか?」
「え? いや、別にないけど」
なんだよ、急に。
「そうですか。それは残念です。妹に対する愛情がこれでもかというくらいに表現されているのに」
「テーマが妹じゃなかったら、そうはならないよ。多分」
断定はできないけど、妹というワードを耳にした瞬間、僕の中の何かが覚醒しているような気がするんだよな。
「そうですか……。ちなみに僕のお気に入りは『あなたの漆黒の長髪と雪のように白い肌が脳裏に焼き付いているせいで私はいつもあなたを目で追ってしまう』です」
「声に出して読むなよ……恥ずかしい」
みんなはニコニコ笑いながら、僕の周りに集まってきた。
な、なんだよ、気持ち悪いな……。
「ねえ、雅人。今度は『妹の目』っていうテーマで書いてみない?」
「調子に乗るな。というか、僕の悩みはまだ……」
みんなはキョトンとした顔で僕を見ている。
「な、なんだよ……」
「いや、なんかもう、雅人は妹が好きすぎて妹に気を使いすぎてる感じがするから、一度ゆっくり話し合えばいいかなーって」
なんだよ、それ。
「適当なことを言うな。そういうことができないから僕は今こうして……」
「逃げちゃダメだよ。ちゃんと向き合わないと、何も解決しないよ」
おい、羅々……それは誰の受け売りだ?
「あー、まあ、そうだな。けど、もう少し何かしておきたいな。このまま帰ったら、きっとまた逃げ出しそうだから」
「分かった。じゃあ、今度は……」
またか……。まあ、もう慣れたけどな……。