あー、あー、テステス。
八尺ちゃんは夏樹(僕の実の妹)の体を見ながら外見を変化させた。
「はい! できた!! どう? お義兄ちゃん。私、かわいい?」
「お、おう。あっ、髪は夏樹より少し短いな」
「そうしないと見分けがつかないからねー。ねえねえ、お義兄ちゃん、ギュッてしてー」
「はいはい、よしよし」
「あー、これ最高。お義兄ちゃんに包まれてる。もうずっと幼児体型でいようかなー」
「そ、それはダメだ! というか、今すぐ私のお兄ちゃんから離れろ!!」
「うえーん! 夏樹ちゃんが怒ったー! お義兄ちゃん、助けて!!」
「お兄ちゃん騙されないで! それ嘘泣きだよ!!」
「それくらい分かってるよ。でも、だからって八尺ちゃんをいじめるのはよくないぞ」
「そうだ! そうだ! もっと私に優しくしろー!」
「わ、私別にいじめてなんか」
「ねえ、お義兄ちゃん。今日は私と一緒に寝ようよ」
は?
「え? あー、いいぞ」
え? ちょ、ちょっと待って……。
「やったー! お義兄ちゃん、大好きー!!」
やつは私のお兄ちゃんの胸に頭を擦りつけている。やつは私の方を見ると嘲笑った。こ、こいつ!
「お義兄ちゃん! 夏樹ちゃんの顔怖いよ! なんとかしてー!」
「はぁ? 私は別に何もしてな……」
「夏樹、頼むから八尺ちゃんをあまり刺激しないでくれ。というか、お前の方がお姉さんだろう? 少しは我慢してやれよ」
「お兄ちゃん、お願い。私の話を聞いて。あのね」
「あっ! 今、夏樹ちゃんが私の腕に髪の毛刺した! ほら、見て! 血が出てる!!」
「は? 私、何もしてな……」
「夏樹、どうしてこんなことしたんだ?」
「違うよ! お兄ちゃん! 私、本当に何もしてないんだよ!」
「じゃあ、この血は何なんだ?」
「そ、それは……」
「お義兄ちゃん、もう夏樹ちゃんのことは無視していいよ。あー、それから、そろそろお風呂出よう。逆上せちゃうよ」
「あー、そうだな。そうしよう」
ま、待って……どうしてそうなるの? ねえ、お兄ちゃん。私のこと見てよ、私の話聞いてよ……。
「お、お兄ちゃん……」
「夏樹、お前は少し頭を冷やせ」
「そうだ! そうだ! 反省しろ!!」
「そ、そんな……」
「キュー、しばらく夏樹を見張っててくれ。今の夏樹、ちょっと変だから」
「キュー!!」
お兄ちゃん……私、何も悪いことしてないよ……。全部そいつの自作自演だよ。お兄ちゃん、お願い、気づいて……。
「……お兄ちゃん」
「夏樹、お前には失望した。しばらくそこで反省してろ」
「……うん、分かった……そうする」
私がそう言うとお兄ちゃんとあいつは浴室から出ていった。
「キュー」
「はぁ……あんたはいつも幸せそうね」
「キュー?」
「ごめん。あんたの言ってること全然分かんない」
キュー(丸みを帯びているキューブ型の空間。なぜか自我がある)はそれを聞くと突然しゃべり出した。
「……あー、あー、テステス。ねえ、ちゃんと聞こえてる?」
「え? あー、うん、一応」
「そっかー。なら、パパが来るまでちょっとお話ししようよ」
「え? あー、うん、分かった」
「ありがとう。うーん、何の話がいいかなー」
はぁ……お兄ちゃん、早く来ないかなー。




