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決着

 夏樹なつき(僕の実の妹)と八尺ちゃんの腕相撲が始まってから、まもなく五分になる。身長、体重、筋力……誰がどう見ても八尺ちゃんの方がまさっているのに、なぜか夏樹なつきはまだ耐えている。それどころか八尺ちゃんを押しているように見える。まあ、その代わり痛い思いをしているが……。


「どうして……どうしてそんなことできるの! 絶対痛いでしょ!」


「知らないのか? 好きな人がそばにいると痛みがやわらぐんだよ。それに私は妖怪寄りの半妖だから、これくらいすぐ治る。それよりそろそろ本気を出した方がいいぞ? デカブツ」


「デカブツって言うなー!!」


 夏樹なつきは自分の腕を自分の髪でつらぬき、何回かグルグル巻きにしたあと綱引きのように自分の腕を引っ張ることで力量差をゼロにしている。腕を貫く髪の本数が増えれば増えるほど力がすが、それと同時に痛みと出血量は増えていく。まあ、夏樹なつきはその血を髪に吸わせているから失血死することはないだろう。けれど、痛みは消せない。さて、どうしてものかな。


「そうそう、本気出さないと後悔するよ。よおし! 髪、三本追加!!」


「や、やめてー! それ以上やったら腕の神経壊れちゃうよー!」


「神経の一本や二本壊れたところで私の心は壊れない! さぁ、戦え! それとも降参するか?」


「それはしないよ! お義兄にいちゃんとハグしたいから!!」


「そうか……だが! 私もそれをほっしている! ゆえに私はお前を倒す!! 髪、七本追加!!」


「うー! そ、そこまでして勝ちたいのー?」


「勝ちたい!」


「どうしてそこまで勝ちにこだわるの?」


「お兄ちゃんががっかりするからだ!!」


「いや、別にしないぞ」


「だってさー」


「だとしても! 私は必ず勝たなければならない! 私にとってお兄ちゃんは私の全てなのだから!!」


「そっか。じゃあ、そろそろ終わりにするね。霊力解放『怪力無双』」


「……っ!!」


 お、重い……。まだこんな力を隠していたのか……。


「くっ……! 髪、十一本追加!!」


「それだけでいいの?」


「な、何?」


 な、なんだ? やつの体の筋肉がどんどん膨れ上がっていく。まるで入道雲のように……。


「あれ? どうしたの? 夏樹なつきちゃん。辛そうだね」


「す、少し考えごとをしていただけだ」


「へえ、そうなんだ。じゃあ、もう終わらせるね。ふんっ!」


「……っ!! 脳筋、なんかに……! 負けて……たまるかー!! 髪、一万本追加!!」


「い、一万本!? そんなに刺して大丈夫なの!?」


「人の心配するより自分の心配しろよ」


「い、言われなくても……!!」


「今さら遅い!! これで……終わりだあああああああ!!」


「う、うわああああああああああああああああああああ!!」


 決着と共にテーブルが砕け散る。


「勝者! 夏樹なつき!!」


「やったー! 勝ったー!!」


「うー……負けた。負けちゃったよー」


「お兄ちゃん、私勝ったよ! ハグして!!」


「はいはい、よしよし」


「あー、やっぱりお兄ちゃんのハグ最高」


夏樹なつき、お前の腕まだボロボロだから完治するまでソファに座って安静にしてろ」


「えー」


「えー、じゃない。ほら、早く行け」


「はーい」


「はぁ……やれやれ。八尺ちゃん」


「……なあに?」


「よく頑張ったな。よしよし」


「え? なんで? どうして?」


「なんでって、敗者にはハグしないだなんて一言も言ってないだろ? だから、これは頑張ったで賞だ」


「うう……ありがとう、お義兄にいちゃん。私、一生お義兄にいちゃんのこと守るよ」


「一生って……うーん、まあ、いいや。好きにしろ」


「ありがとう、お義兄にいちゃん。お義兄にいちゃんは優しいね」


 大きな義妹いもうとと小さな実妹いもうと。どっちもよく食べるし、どっちもまだまだ子ども……。でも、特に不快感はないな。どうしてだろう。

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