腕相撲
八尺ちゃんは色々でかい。だから、よく食べる。夏樹(僕の実の妹)と同じくらいよく食べる。おなかの中にマイクロブラックホールでもあるのかなー?
「お義兄ちゃん! 一緒にお風呂入ろう!!」
「うーんと、お前と一緒に入ったらお風呂場が狭くなるから無理だ」
「えー、そんなー。別にいいじゃん」
「おい、こら。私のお兄ちゃんにちょっかい出すな」
「あっ、夏樹ちゃん、いたの? 小さすぎて見えなかったよー」
「お前、ケンカ売ってるのか?」
「私と夏樹ちゃんじゃケンカにならないよー。あっ、腕相撲する?」
「お前は知らないだろうが、私は日々成長している」
八尺ちゃんは夏樹の頭と胸と尻を触ると疑問符を浮かべた。
「おい! 今体は関係ないぞ!!」
「え? そうなの?」
「そうだ! いいか? 私は『体ではなく心が成長している』と言いたいんだ」
「へえ、そうなんだ。じゃあ、私と腕相撲しても勝てるの?」
「勝てる。確実に」
「ホントにー?」
「ああ、本当だ」
「そっかー。じゃあ、今から腕相撲しようよ」
「ああ、いいぞ。かかってこい、デカブツ」
「骨折れても知らないよー、おチビちゃん」
「そっちこそ負けても泣くなよ。お兄ちゃん、合図出して」
「……本当にやるのか?」
「やらないとやられちゃうよ」
「そうか。分かった」
リビングにあるテーブルの上で始まろうとしている戦いの勝敗に興味はないが、どんな形で決着がつくのか見てみたいとは思っている。だから、僕は二人の手を優しく包み込んだあと、魔法の言葉を言った。
「勝ったらハグしてやってもいいぞ」
『……っ!!』
「……レディー……ゴー!!」
「八尺ー!!」
「夏樹ー!!」
『とっとと敗北しやがれー!!』
あー、なんかすごいことになりそうだなー。




